お店や施設の住人のお話　〇たぬきち５〇

〇たぬきち〇
エピソード５「たぬきちの服はイケてる？」

【１話】
ふぅ…
おっと、いけないいけない
どんなご用だなも？
○○さん…ぶっちゃけた意見を聞かせてほしいんだけど、
ボクのこの服って、どう思う？
店の主人としてのイゲンとか、ちゃんと感じられるだもか？
まーたそうやって当たりさわりないコト言って、お茶を濁そうなんて、
最近の若者っぽいマネはやめてほしいだも!
そっか…○○さんの目から見ても、
この服はイケてないんだもね…


【２話】
ふぅ…
おっと、いけないいけない
どんなご用だなも？
…こないだ○○さん、ボクの服のコト、イケてないって言ったでしょ？
…おんなじコトを実はきぬよちゃんにも言われてるんだなも…
きぬよちゃんってば、
「たぬきちさん!　もっと今風の服を着ましょうよ
おねーちゃんがきっと無料で仕立ててくれるから」
…なーんて、分かってないコト言うんだも!
なんだかんだ言ってもきぬよちゃんってば、やっぱりまだコドモだなも
あれじゃー背中で語るオトナの男の美学なんて、
とてもじゃないけどまだまだ理解できそうにないんだも!


【３話】
ふぅ…
おっと、いけないいけない
どんなご用だなも？
…お客さんにね、この服が今っぽくないって今日も言われてしまっただも
狙ってやってるコトとはいえ、面と向かって言われると、
さすがにショックなモノがあるだなも…
当たり前だなも!
これでもボクは都会にいたころ、
「シャレ者のたぬきち」で通っていたんだも!
それもこれも商売のためだも、○○さん…
商売人というのはね、お客様より目立ってはいけないんだも!
態度も服装もしかりだも…節度が大切なんだなも!
ちょっとぐらいダサい方が年配のお客様も安心してくれるんだなも!


【４話】
ふぅ…
おっと、いけないいけない
どんなご用だなも？
…うん、ちょっと新しく考えている商売があるんだけど、
頼んでいる相手がなかなか首をタテに振ってくれないだも!
上手くいけば絶対に都会でもウケると睨んでるんだけど…
それはね…服と雑貨のセレクトショップだも!
ボクが好きなモノだけを取りそろえた個性的なショップだも!
最近ね、都会にいた頃の昔の友達が、
お手紙でいろんな情報を送ってくれるだなも!
今はこういうお店、流行ってるらしいし…都会でばかウケだなも!
ただ、雑貨はボクの方で仕入れてくるとして…服はそうはいかないだも
しょーがない、明日もう一度頼んでみるだも…


【５話】
ふぅ…
おっと、いけないいけない
どんなご用だなも？
ん？
ああ…もしかして、セレクトショップの話？
あれならもうやめただも!
綺麗さっぱり諦めただなも!
仕立て屋のあさみさんに諭されただも
「たぬきちさん…その商売、ホントに大丈夫なん？」って
ボクもその一言で、ハッと我に返っただも…
確かに最近のボクはちょっと浮かれていたかもしれないだなも
服がどうだとか、都会がどうだとか…
地道にコツコツお店を切り盛りしてるあさみさんには、
そのフラフラした気持ちがお見通しだっただも!
そうだも!
今はこの商売に全力を尽くすだなも!
都会からきたお手紙は昨日のうちに破って捨てたし
それにしても、ハァ…
なんだかあさみさんには、いつも目を覚まさせてもらってばっかりなんだも
幼馴染とはいえ、なんかちょっとだけ、悔しさが残るんだも…