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PARTY・PLAN〜小部隊計画〜

雑談

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    mochizo No.10782953 

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    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第38話「クチバ防衛戦2」

    「ふぅん、ソウルねぇ。あんたがサカキの息子かぁ。」
    「そこか!」
     ソウルは反射的に声のした沖の方を向いた。そこには、ボーマンダに乗った女がいた。女はロケット団の団服らしきものを着て、不敵に笑っている。
    「とはいえ、サカキと比べたら、卵に足が生えた程度だな。」
    「何だと!?」
    「おい、シェイラ!何のつもりだ、これは!」
     女の言葉に逆上したソウルが言い返そうとした瞬間、グリーンが割り込み、女に向かって叫んだ。しかし、女は悠々と返した。
    「世界征服ゲェーム♪」
    「ふざけるな!そんな理由で、第一、お前はレッドに負けて改心したんじゃないのか!」
    「そう見せかけてただけさ。思った通り、上手く騙されてくれたな。最高!」 
     シェイラは笑いながら言い放った。
    「てめぇ・・・!」
    「落ち着けよ。せっかくのゲームだ。楽しまなきゃなぁ!・・・とはいえ、この状況を見る限り、一方的な展開になりそうだな。」
     そう言って、シェイラは指を鳴らした。すると、シェイラの近くの水中から、ホエルオーが数体浮上してきた。そして、ホエルオーの背中には、コンテナの様な機材が積まれている。
    「何をする気だ!」
    「いい事♪」
     シェイラがもう一度指を鳴らすと、機材のハッチが全て開き、中から構造物が次々と現れ、無数のモンスターボールが射出された。そして、モンスターボールから、フライゴンとガブリアスの大群が現れた。
    「冗談だろ?オイ・・・。」
    「やっちまいな♪」
     シェイラの一言をきっかけに一斉攻撃が始まった。フライゴンが一斉に輪唱を放ち、ガブリアスが一斉に流星群を放った。
     爆風が駆け巡り、怪音波が襲いかかる。更に構造物で回復したボスゴドラ達も攻撃を再開し、好転しかけていた状況が一気に悪化する。かろうじて粘っていたトレーナー達も次々と倒れていく。
    『イヒヒヒ、ミカァァ!』
    「うわっ!」
    「チッ!」
     突然悪化した状況に一瞬動きをとめたヒビキとソウルにミカルゲの影討ちが襲いかかる。間一髪でかわすも、ヤミラミ達が追撃してくる。
     ジムリーダー達も必死に応戦するが、先程とはうってかわって、相手の行動に統制が取れてきたので、苦戦を強いられている。
    「くそっ!このままじゃヤベぇ・・・」
    (あの野郎!こんな時にいないなんて・・・)
     こんな時に頼りになる好敵手は、ここにはいない。分かっていながらも、苛立ちが募っていく。
    「ちくしょう!レッドの馬鹿野郎!」

    「・・・吹雪!!」
    「カメッ!」
    「クー!」
    「カビーッ!」
    「お?」
     カメックスとラプラス、カビゴンの吹雪が空を駆け巡った。上空から攻撃していたフライゴン達が凍り付き、次々と墜落していく。
    「・・・誰が馬鹿野郎だって?」
    「「「「レッド!!」」」」
     そこにいたのは紛れもなく、今はシロガネ山で修行しているはずの青年の姿だった。
    「おせーぞ、レッド!」
    「うるさい、馬鹿グリーン。」
    「ガキか、お前は!?」
     ただその場にやってきて、危機を回避しただけ、まだ不利な状況ではあるのに、彼がその場にいるだけで奇妙な安心感が広がっていく。
     レッドはシェイラをまっすぐ見据えて言った。
    「ところでシェイラ、これはどういう事?」
    「見て分かんねぇか?世界征服ゲーム—カントー編さ。」
    「・・・嘘つき。本当は何がしたいの?」
    「知りたきゃ生き残ってみな。ブルム、リビス。」
     シェイラはそう言うと、新たに二頭のボーマンダを繰り出した。そして、ニタリと笑った。
    「とはいえ、これだけ豪華な面子が揃って、ろくな相手を出さないのも失礼だな、ゼティス!」
     シェイラの声と同時に、一頭のホエルオーのコンテナが爆散し、中から巨大なガブリアス—ゼティスが現れた。
    「グガアァァァァァァァッ!!!」
     地上に降り立ったゼティスは自身の存在を誇示するかのように吼えた。たったそれだけで空気が、地面が振動する。
    「ゼティ〜ス。」
    「グガ?」
    「好きなだけ暴れな♪」
     主人であるシェイラの許しを受けたゼティスは、高らかに笑い声をあげた。
    「グカカカカカカカ!!!」
     そして、まっすぐにレッド目掛けて突進した。

    「ふぅ・・・」
     レッドが肩の力を抜くように息を吐いた。いつしかあれほどいたボスゴドラやガブリアスはほぼ倒され、構造物も大半が破壊されていた。
    (気にくわねぇけど、レッドはやっぱりすげぇ)
     グリーンは息を整えながらそう思った。襲いかかるゼティスの相手もしつつ、他のポケモン達も倒していたのだ。並みの実力でできる芸当ではない。
    「・・・やるねぇ。そうこなくちゃな、ゼティス!」
    「グカ?」
    「退くぞ。勝負はお預けだ。」
     そういうと、シェイラは懐から何かの装置を出し、スイッチを押した。—瞬間、太陽が発生したかと思われるほどの閃光が辺りを包んだ。
    「・・・しまった!」
     目がようやく見えるようになった頃には、構造物の破片を残し、ポケモン達やシェイラは完全に姿を消していた。
    「あの野郎、逃げやがった!」
     悔しがるソウルにヒビキはバクフ—ンを労いながら言った。
    「でも、この街は護れたよ。」
     そう、何とか戦いに勝利し、クチバシティを護り抜く事に成功したのだ。しかし、レッドにはどこか腑に落ちない点があった。
                      —続く—
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    mochizo No.10782970 

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    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第39話「ミナモ防衛戦1」

     一方その頃、ホウエン地方屈指の都市—ミナモシティも、ポケモンと構造物の攻撃を受けていた。
    「はぁ、はぁ」
     逃げ遅れた女性がポケモンの攻撃をかいくぐりながら必死に走っている。
    「ペンドラァ!」
    「きゃああ!」
     その女性に気付いたポケモンが角を振りかざし、容赦なく襲いかかった。
    「バシャーモ、ブレイズキック!」
    「バシャーッ!」
    「ドラァ〜」
     少女の声と同時に女性とポケモンの間に割り込んだバシャーモが燃えるキックをポケモンにくらわせた。とっさの事に対処できず、ポケモンは崩れ落ちる。
    「ポケモンセンターに、早く!」
    「あ、ありがとう!」
     少女は女性にポケモンセンターに避難するように伝える。女性が走り去ったのを見届け、先程倒したポケモンが起き上がってこないのを確認すると、少女—ハルカは汗を拭った。ポケモンの襲撃から、1時間余りが経ち、ジムリーダーの救援も加わったが、絶え間なく押し寄せる大型ポケモンを押し戻すには至っていない。しかし、ハルカの一瞬の隙を突き、次のポケモンが襲いかかった。赤い頭部と長い腕を持つポケモンだ。
    「ラグラージ、冷凍ビーム!」
    「ラァジ!」
    「グギャッ!」
     そこへ少年と少年が繰り出したラグラージが駆けつけ、冷凍ビームでポケモンを攻撃した。
    「地面は普通で、氷は効果抜群・・・やっぱりこいつ、ドラゴンタイプだ!ハルカ、大丈夫か?」
    「うん、ありがとう。ユウキ君!」
    「でも、これはあの時よりもキツいぞ。どれもホウエン地方にはいないポケモンだ。タイプがまるで分からない!」
     ユウキが周囲を警戒しながら呟くと、ユウキの近くにいた緑色の髪の少年が言った。
    「でも、少しずつ分かってきましたよ!あの紫色のポケモンは毒・虫タイプ、赤い頭のはドラゴンタイプ、白いポケモンは氷タイプだと思います。」
    「そうだよ!タイプさえ分かれば何とかできるよ!」
     ハルカの言葉を聞いて、ユウキは顔を引き締めて頷いた。
    「そうだな。ハルカ、ミツル、無理はするなよ!3人でカバーし合うんだ!」
    「うん!」
    「はい!」
     ユウキの言葉にハルカとミツルはしっかりと頷いた。

    「「サイコキネシス!!」」
    「ソルッ!」
    「ルナ!」
     双子のソルロックとルナトーンが放ったサイコキネシスが紫色のポケモン—ペンドラーの一団を吹き飛ばした。しかし、空いた隙間に新たなペンドラーがおさまり、襲いかかってくる。
    「これじゃ」
    「きりがないよ!」
     双子が心底まいった様子で言うと、赤い髪の少女が叫んだ。
    「でもやるしかないよ!負けられない!コータス、オーバーヒート!!」
    「コーッ!!」
     コータスが放った強烈な爆炎がペンドラー達を薙ぎ払う。
    「アスナの言うとおりだ。皆、ここが踏ん張りどころだ。何とか耐え抜いてくれ!」
     チルタリスに乗った女性—ナギが鼓舞するように言った。その時—
    「耐えられるもんならな。」
     上空から女性の声が聞こえたかと思うと、ナギに向かって凄まじい熱線が飛んできた。
    「!チルタリス、守る!」
    「チルッ!」
     素早く反応したナギは、チルタリスの守るで熱線を受け止める。強烈な威力に一気に押し返されそうになるが、何とか耐えた。
    「上等。とはいえ、ジムリーダーが簡単にやられちゃ立場が無いわな。」
    「誰だ!」
     ナギが熱線が飛んできた方向を睨むと、そこには3本の頭を持った不気味なポケモンの背に乗った女がいた。
    「アタシはシェイラ、この世界の支配者にして選ばれし者。」
    「何だと!?」
    「シェイラ?お前さんなのか!?」
     シェイラの言葉に、ナギの近くで戦っていたテッセンが呼びかける。
    「なんだ、生きてたのか。テッセン。」
    「知り合いなのか?」
    「・・・少しな。何のつもりじゃシェイラ!止めるんじゃ!」
     ナギの問いかけに短く答えると、テッセンはシェイラを説得しようとする。
    「止める気は無いね。止めたいなら、止めてみな♪」
     そう言うと、シェイラは指を鳴らした。すると、上空からいくつもの岩の塊が降ってきて、地面に落ちた。
    「大爆発。」
     指示に従い、巨大な岩の塊は正体を現した。
    「これは・・・、ポケモン!?皆伏せろ!!」
     ナギの叫び声と同時に大爆発が発動した。
                    —続く—
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    mochizo No.10782980 

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    PARTYPLAN〜小部隊計画〜第40話「ミナモ防衛戦2」

    「うっ・・・」
     強烈な爆風に吹き飛ばされ、一瞬気を失っていたナギはよろめきながら起き上る。どうやら生きているようだ。他のジムリーダーやハルカ達も何とか立ち上がろうとしている。大打撃を受けてしまったが、乱闘の中で大爆発を使った以上、相手の勢力も打撃を受けている。
    (立ち上がらねば、ここで負けては・・・!)
    「さて、ポーン。回復行動開始。」
     必死に立ち上がろうとするナギの耳にシェイラの声が聞こえてきた。
    (ポーン?何をするつもりだ?)
     すると、巧みに大爆発の範囲から逃れていた構造物が倒れたポケモンの元へ近づいていく。そして、胴体部分を開き、何かを取り出した。
    (あれは・・・、まさか!)
     取り出された物は光輝く結晶体だ。ポーンというらしい構造物は、戦闘不能になったポケモン達に結晶体をあてがっていく。直後、まばゆい光がポケモンの身体を包んでいく。
    「まずい!止めなくてはッ!」
     分かっているが、傷ついた体はなかなか動かない。そして、全てのポーンが結晶体を使い終わった。すると、傷つき倒れていたポケモン達が何事もなかったかのように起き上がり、再び進撃を開始したのだ。
    「元気の塊ですか。やってくれますわね・・・。」
     そう言ったのは、カナズミシティジムリーダーのツツジだ。そう、彼女の言うとおり、ポーンが使用したのは元気の塊。戦闘不能になったポケモンを完全回復させるアイテムだ。これでは、結果的にこちらだけが大打撃を受けた形となってしまう。
    「ホウエン地方、頂き♪」
     勝利を確信したシェイラが笑う。
    「私達の大切な場所をお前の好きになどさせるか!」
    「笑わせるなぁ。その様で何ができる?」
     ナギ達の必死な言葉をシェイラは鼻で笑う。
    「よく言った。ナギ!」
    「!」
     その瞬間、ジムリーダーやハルカ達を包囲していたポケモンの集団の一角が薙ぎ払われる。大型ポケモン達が軽々と宙を舞う。
    「ミクリ・・・、ダイゴさんも・・・!」
     そこにいたのは、ホウエンリーグチャンピオンのミクリと親友のダイゴ、そして四天王の面々だった。
    「好き勝手やってくれたじゃねぇか!」
    「アチシ達が相手になるよ!」
    「・・・不愉快ですわ。」
    「覚悟は出来ておろうな?」
     啖呵を切る四天王を特に相手もせず、シェイラはその場にいたもう一人の男を睨みつけた。
    「・・・来るのが早過ぎやしねぇか?あんたの仕業か、ムッシュ。」
    「ウィ。その通りです。襲撃があった時点で私は彼らを呼ぶ事を最優先に行動していました。親玉たるあなたがこの場にやってくる事を見越してね。」
     そう言ったのは、ルネシティジムリーダーにしてミクリの師匠であるアダンである。
    「カァーッ・・・、しゃあねぇな。ここはお前らの勝ちでいいよ。他の地方も同時に攻撃してるしな。最後に取っといてやる。ドーブル共!」
    「「「「!!」」」」
     シェイラの声と共に巧みに建物に身を隠していたドーブルが姿を現した。
    「フラッシュ、猫騙し!」
    「しまった!」
     ドーブル達が一斉に技を放つ、閃光と抗えない拘束がその場の全員の動きを完全に封じ込める。
    「・・・逃げられたか!」
     ようやく拘束が解け、視力を取り戻した時にはポケモン達もポーンもシェイラも消えていた。
    「大丈夫か、ナギ?」
    「ああ、大丈夫だ。助かったよ。しかし、気になる事がある!」
    「・・・確かに、他の地方へも同時に攻撃していると言っていたな。それはこれから直ちに調べるよ。でも、今は少しでも体を休めておいた方がいい。この状態では、総攻撃を喰らってはひとたまりもない。」
    「しかし・・・!」
    「ナギ、ミクリの言うとおりです。今は私達に任せて、傷の手当てを。」
    「・・・分かりました。お願いします。」
     ミクリとアダンの言葉でナギは少しだけ肩の力が抜けた気がした。そうだ、自分達は護り抜けたのだ。大切なこの場所を。
                       —続く—
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    mochizo No.10782989 

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    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第41話「ナギサ防衛戦1」

    「ブーバーン、火炎放射!」
    「レントラー、チャージビーム!」
    「「グマァ!」」
     殴りかかってきた二体のリングマをブーバーンとレントラーが返り討ちにした。
    「見たか、俺達の力!」
    「いいから、戦え!」
     決め台詞とポーズを決める親友オーバにデンジは短くつっこんだ。ここは、ナギサシティ。ここもまた、ポケモン達の襲撃に遭っていた。
    「なんだってんだよ!こんなに大群で、罰金だぞ!」
    「頑張ろう、シロナさん達がもうすぐ来てくれるから!」
    「そうだよ、それまでは私達がここを守らなきゃ!」
     激戦のさなか、コウキは騒ぎだす幼馴染のジュンを励ました。普段はナナカマド博士の手伝いをしていて、偶然この事態に巻き込まれたヒカリもあえて明るく言った。
    「分かった!行くぞ、2人とも。遅れんじゃねぇぞ!」
    「「うん!」」
     ナギサシティは、西側にゲート、北側と東側には海が、南側には岩場がある。現在、ポケモン達は、西・東・北側から侵攻しており、ジムリーダーや有志のトレーナーを3組に分けて応戦しているのだ。ただでさえ数で負けているのに戦力を分散され、徐々に押されていた。当初は西側に敵がおらず、油断して街の中に入った事が仇となっていた。更に北側と東側では、水ポケモン達の襲撃で少しずつ街が水没し始めていた。これでは、行動範囲が狭まってしまう。だが—
    「このマキシマム仮面に水辺での戦いを挑むとは、いい度胸だーっ!行け、フローゼル!」
     水タイプを得意とするノモセシティジムリーダーのマキシが東側の敵の侵攻を食いとめていた。

    「皆、大丈夫!?」
    「「「シロナさん!」」」
     戦闘開始から数時間後、シロナ率いる四天王のメンバーがナギサシティに到着した。
    「ところでオーバ、何故あなたはここにいるのです?」
    「きっと仕事をサボって遊んでたんですよ〜。」
    「ほほほ、若いわね〜。」
     四天王のゴヨウがオーバが不在だった理由を問いただすと、リョウがちゃかすように言った。
    「違うわッ!デンジがまたジムの改造を必要以上にしてないか見に来たんだよ!」
    「お前は俺の母ちゃんか。」
     オーバの弁解にデンジが冷静につっこんだ。
    「・・・シェイラ、いるんでしょう?出てきなさい!」
     到着したシロナは、大声で叫んだ。
    「やっぱりバレてたか。さすがだなぁ。」
     声と共に、南側の岩場の陰からドンカラスに乗ったシェイラが現れた。
    「・・・あなたの事は少しは知ってるつもりよ。これだけのポケモンを動かせるのも、これだけの事が出来るのも、考えたくは無かったけど、あなたしかいないもの。」
    「アタシの事を・・・ねぇ。まぁ、いいや。楽しいだろ?この状況♪」
     シェイラの言葉を聞き、シロナは静かで強い声で話しかけた。
    「・・・いくつか質問をするわ。yesかnoで答えなさい!」
    「・・・OK。言ってみな。」
     その場に異様な緊迫感が生まれる。
    「・・・これをやったのは、あなた?」
    「yes。」
    「あなたの意思でやったの?」
    「yes。」
    「ここ、ナギサシティである必要はあったの?」
    「no。」
    「・・・最後の、質問よ・・・。ここで、本気の私と戦う気はあるかしら・・・?」
     最後の問いをしたシロナの目には静かな怒りが宿っていた。シェイラは笑って答えた。
    「yes♪」
    「・・・!ガブリアス、ドラゴンダイブ!!」
    「ガブッ!!」
     シロナは相棒のガブリアスで仕掛けた。それに対してシェイラは素早く対処した。
    「オウリュウ、ドラゴンクロー。」
    「ガァァァッ!」
     北側の海中から飛び出したオウリュウは、シロナのガブリアスのドラゴンダイブを受け止めた。真正面からの力と力の激突が周囲に衝撃波を生んだ。
    「ガブリアス、ストーンエッジ!」
    「オウリュウ、ドラゴンクロー—飛刃。」
     ガブリアスが放った強力な岩石の弾丸を、オウリュウはドラゴンクローの斬撃を飛ばして粉砕した。
    「ドラゴンクロー—飛刃・・・。やっぱり本気のようね。ガブリアス、ギリギリまで接近するのよ!」
    「させるな。ドラゴンクロー—飛刃連舞!」
     高速で間合いを詰めようとするガブリアスに無数のドラゴンクローによる斬撃が襲いかかる。かわしていくガブリアスだが、避けきれなかった数発が掠る。しかし、ガブリアスは怯まずに一気に距離を詰めた。
    「ギガインパクト!」
    「急上昇でかわせ。」
     至近距離から迫るギガインパクトをオウリュウは目にも止まらぬ速度の急上昇でかわした。それを確認すると、シェイラはシロナに言った。
    「なぁ、シロナ。勘違いしてないか?おめーは、アタシを倒さないといけないが、アタシにはおめーだけを狙う理由が無い。」
    「シェイラ?あなた、まさか!」
     シェイラの言葉の意味を接した様子のシロナは顔を青ざめた。
    「リョウ、キクノさん、オーバ、ゴヨウ!皆を守って!」
    「出来るかな?オウリュウ、流星群—街滅!!」
     シェイラの指示を聞いたオウリュウは力を込め、どす黒いエネルギー球を吐きだした。エネルギー球は、空中に留まったまま、無数に分裂していく。
    「全部で何発あるか、アタシにも分からねぇ。守れるなら、やってみな!」
     そして、無数のエネルギー球は黒い雨のように降り注いだ。
                         —続く—
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    mochizo No.10782998 

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    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第42話「ナギサ防衛戦2」

     降り注ぐエネルギー球に対し、四天王達はシロナの言葉に従った。
    「アゲハント、むしのさざめき!」
    「グライオン、ストーンエッジ!」
    「ブーバーン、オーバーヒートだ!」
    「ドータクン、サイコキネシスです!」
     それぞれのポケモンの渾身の攻撃がエネルギー球を迎撃していく。そのおかげで味方には直撃しなかったが、数発が地面に落下し、大爆発を起こす。シロナのガブリアスもストーンエッジで迎撃しつつ、全弾をかわしきった。シロナは思わず、周囲の安全を確認してしまう。
    「皆、大丈夫!?当たって無い?」
    「・・・本気って言う割には余裕じゃねぇか。オウリュウ、ドラゴンクロー—落星!」
    「・・・しまった!ガブリアス・・・」
     その隙を逃さず、シェイラはオウリュウに追撃の指示を与えた。オウリュウは一気にガブリアスの懐に飛び込むと、ドラゴンクローを叩きつけ、そのまま急降下し、地面に叩きつけた。
    「ガブリアス!」
    「おいおい、かっこ悪いな。アハハハ!」
     まともに攻撃を受け、倒れたガブリアスを見て、シェイラは高笑いをした。そこへガブリアスから離れたオウリュウがシェイラの横に滞空して言った。
    『おい、シェイラ。そろそろ時間じゃないのか?』
    「マジかよ?いい所なんだけどなぁ。」
     シェイラはそう言うと懐から装置を取り出し、スイッチを押した。すると、岩場に隠していたテンペスト号がオートパイロットで離陸して現れた。
    「シェイラ、逃げるつもり!?」
    「そうさ、アタシより格下のおめーと戦ってもつまんねぇからな。ケリをつけたいなら、探してみな。見つかればの話だけどな。」
     シェイラがそう言ってサングラスをかけると、テンペスト号が閃光弾を発射し、周囲の視界を白く塗り潰した。
    「・・・シェイラ・・・!」
     シロナ達の視界が戻った頃には、ポケモン達は消え、テンペスト号は遥か遠くへと遠ざかっていた。
    「皆、とりあえず被害状況の把握を急いで!怪我人はすぐにポケモンセンターへ!あと、国際警察に連絡を!」
     シェイラを追跡する事は後回しにし、シロナはナギサシティの復旧に向けて指示を出す事にした。
    「シロナさん、大丈夫ですか!?」
     シロナの事を心配して、四天王の面々が駆け寄ってきた。
    「ええ、大丈夫。ガブリアス、大丈夫?」
     自分の無事を伝えたシロナは自力で起き上がったガブリアスに尋ねた。すると—
    「・・・これは?」
     ガブリアスの傍に、手持ち金庫が落ちていた。そこには、『ボケのシロナへ』とシェイラの字で書かれた紙切れが貼られていた。辺りを探したが、どうやら金庫の鍵は無いようだ。どう考えても、シロナに送られた物である事は間違いないが、鍵が無くてはどうしようもない。
    (シェイラ・・・、あなたは何を考え、何を求めているの?)
     シロナは金庫をポケモンセンターに置くと、駆けつけた国際警察のメンバーに事態を説明し始めた。
                       —続く—
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    mochizo No.10783006 

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    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第43話「ヒウン防衛戦1」

    「まったく、プラズマ団が解散したと思った矢先にこれか!ドリュウズ、ドリルライナー!」
    「ドリュッ!」
    「シャボッ!」
     ドリュウズのドリルライナーを喰らったアーボックは、吹き飛ばされ壁に激突して気絶した。クチバシティ、ミナモシティ、ナギサシティに続き、イッシュ地方有数の大都市—ヒウンシティもポケモン軍団の襲撃に遭っていた。ジムリーダー達が必死に応戦するも、狭い路地が多いヒウンシティに散らばったポケモン達を倒していくのは簡単な事ではない。必然的に応戦する側も広い街に散らざるを得ない状況になっていた。
    「ムーランド、ギガインパクト!」
    「ムゥラッ!」
    「カイロッ!」
     ムーランドの強烈な一撃にカイロスは踏ん張りきれずに弾き飛ばされた。
    「やった!」
     ムーランドのトレーナーの少女が勝利に喜んでいると、背後に忍び寄っていたペルシアンが跳びかかった。
    「きゃあ!」
    「シャーッ!」
    「ジャローダ、リーフブレード!」
    「ジャローッ!」
    「ギャッ!?」
     しかし、割り込んだ少年のジャローダの一撃がペルシアンを返り討ちにした。まともに攻撃を受けたペルシアンは急所に当たったのか、一撃で戦闘不能になったようだ。
    「あ、ありがとー!チェレン〜!」
     チェレンと呼ばれた少年は、眼鏡の位置を直しながら少女に注意を促した。
    「駄目じゃないか、ベル。気持ちは分からなくもないけど、どこから敵が襲ってくるか分からないんだよ?油断しちゃいけない!」
     ベルはチェレンの言葉を聞いて縮こまって謝った。
    「ふええ、ごめん・・・。」
    「・・・分かればいいよ。じゃあ、僕は行くから。今度は気をつけるんだよ。」
     そう言うと、チェレンは別の路地に入っていこうとした。
    「チェレン、待って!」
    「え?」
     ベルはチェレンの袖を掴んで引き止めた。思わぬ行動にチェレンは転びそうになったが、何とかこらえた。
    「な、何だい、ベル?」
    「あたしね、思うんだけど、一緒に行動しない?」
    「え?」
    「上手く言えないけど、2人でいた方が危なくないと思うの!あたしもチェレンも。だから一緒に行こ?」
     ・・・まったく、彼女は昔からこうだ。自分にはよく分からない事を言い出したりする。だが、こんな事は幼馴染ゆえ慣れっこだ。チェレンは素直に頷いた。
    「分かった。一緒に行動しよう。何かあったら、お互い知らせ合おう。」
    「うん、分かった!」
     一緒に行動する事になったベルとチェレンは、ポケモンの鳴き声が聞こえた路地へと入っていった。

    「ミジュマル、シェルブレード!」
    「ダイケンキ、メガホーン!」
    「ミジュッ!」
    「ケンキッ!」
    「ンモ〜!」
     至近距離から2体の攻撃をくらったケンタロスは耐えきれず崩れ落ちた。
    「「やった!」」
     少女と少年はハイタッチした。少女はトウコで、少年はトウヤ。チェレンとベルとは幼馴染の4人組の双子の姉弟である。活発で言いたい事は割とはっきり言うトウコに対し、トウヤはどこか落ち着いた様子が時折見られ、性格的には『似てない』と言われる事もある姉弟だ。一時期は姉弟そろってイッシュ地方を旅していたが、トウヤは途中からライモンシティのバトルサブウェイで修行を積む事を選び、トウコはポケモン達と見聞を広める事を選んだ。とある事件の後、心配したトウヤが駆けつけ、久しぶりに姉弟で行動していた時にこの事件に巻き込まれたのだ。
    「トウコ、すごいじゃん。進化してないけど、ミジュマルはよく育ってるよ。」
    「へへーん。当然でしょ?こう見えても、英雄ですからね!」
    「・・・ミジュマル連れた英雄なんて聞いたことが無いよ。」
    「レアでしょ?」
    「はいはい。」
     こうした会話も久しぶりだが、トウコは何となく寂しそうに見える。ベルやチェレンから聞いた話だが、Nとかいう奴がいなくなったからだという。割とさっぱりした性格のトウコにしては珍しい事だ。
    「「「「ガララララ!!」」」」
     目の前から、ガラガラの一団が飛び出してきた。気になる事はあるが、後だ。
    「トウヤ、行くよ!」
    「うん!」
     こちらに向かってくるガラガラ達に応戦しようとした瞬間、上空からの冷凍ビームがガラガラ達を氷漬けにした。
    「「!!」」
     トウコとトウヤが冷凍ビームが飛んできた方向を見ると、フキヨセシティの輸送機が滞空していた。輸送機のハッチが開き、人影が見える。
    「「アデクさん!」」
    「待たせたな、若人よ!」
     イッシュリーグのチャンピオン—アデクだ。四天王の面々も各々のポケモンに乗って降りてきた。
    「さすがはフキヨセの輸送機よ、思った以上に早く着いた!遅ればせながら、参戦するぞ。」
    「はい!」
    「お願いします!」
     アデク達が降りた後の輸送機からは、操縦を副操縦士に託したフウロがスワンナに乗って降りてきた。しかし、次の瞬間—青空を引き裂いて、電撃がフウロとスワンナを貫いた。
    「キャアアアア!」
    「「「「!!!!」」」」
     完全に不意を突かれ、気を失ったフウロとスワンナは墜落していった。続いて、輸送機にはエネルギー弾が着弾し、エンジンから炎が上がった。幸い、副操縦士はパラシュートで脱出し、飛行不能になった輸送機は煙をあげながら広場に向かって落ちていった。
     あまりの出来事に絶句している一同を今度は強風が襲う。そして、風が収まった後、見上げた空には11の影が浮かんでいた。
    「カイリュー!?」
     その影の正体を見破ったアデクが呟く。よく見ると、確かに10体のカイリューが円陣を組み、その中央に一回り大きなカイリューが滞空している。
    「あーあ、余計な事したから、酷い目に遭ったな。カワイソ♪」
     起こった惨劇を喜ぶかのような声が響いた。
                     —続く—
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    引用

    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第44話「ヒウン防衛戦2」

     声がした方を見ると、空中にポケモンと女が浮いている。どうやら、サイコキネシスで浮かんでいるようだ。
    「これをやったのも、フウロをやったのもお前か!」
     アデクが怒りも露わに叫ぶと、女はクスクス笑いながら答えた。
    「だったら?」
    「何故こんな事をする?何が目的だ!」
    「言っても分からない奴に教えてやる気は無いね。」
     女の答えに、アデクはモンスターボールを取り出して言った。
    「ならば、無理矢理でも答えてもらう!」
    「ハ、アハハハハ!じゃあ、やってごらん♪」
     女がそう言うと、円陣を組んだ10体のカイリューが降りてきた。
    「トウコ、トウヤ!アデクさんも!フウロさんと輸送機が!」
     そこへチェレンが駆けつけてきた。
    「ああ、目の前でやられた!おそらく、あいつがやったんだ。」
    「・・・アデクさん、フウロさんは無事です!運良く街路樹に引っ掛かって、気は失っているけど、生きてます!今は、ベルとカミツレさんが看てくれてます。輸送機の方も噴水に落ちて、誰も巻き込まれてません!」
     チェレンの報告を聞いて、アデクは安堵の息を吐いた。
    「そうか、よく知らせてくれた!あとは、あいつを捕まえるだけだ!」
    「カイリューが10体も?かなりメンドーですね・・・。」
     かなり低い所まで降りてきたカイリュー達を見て、チェレンが呟くと、
    「数だけだと思ってたら、後悔すんぜ〜。行きな!」
     女の号令と同時に、カイリュー達は散開して襲いかかってきた。
     それに対して、トウコ達はそれぞれポケモンを繰り出して迎えうつ事にした。

    「デスカーン、シャドーボール!」
     四天王の一員、シキミのデスカーンが放ったシャドーボールは高速で飛行するカイリューに命中した—はずだったが、攻撃を受けたカイリューは霞のように消えてしまった。
    「また、影分身?これじゃあ、ラチがあかない!」
     戦闘開始直後に、10体の内の2体のカイリューが影分身を使ったのだ。たちの悪い事に、10体のカイリューはほぼ同じ大きさで、動きも統率されており、影分身なのか実体のある他のカイリューなのかが全く区別がつかない。さらに、それぞれが異なる攻撃技を持っているようで、完全に場を掻き乱されていた。
    「ミジュマル!」
    「!トウコ!」
     乱戦のさなか、いつしかトウコと離れてしまったトウヤは、姉の叫び声に振り返った。トウコは足を挫いたうえに、2体のカイリューに畳みかけられ、ミジュマルが雷をくらって倒れてしまったようだ。
    「待ってて!今、行く!」
     トウコの元に行こうとするトウヤの前にカイリューが舞い降りた。トウヤの中に焦燥感と怒りが渦巻いていく。
    「どけぇ!吹雪!」
     ダイケンキの吹雪で攻撃しようとしたが、相手の方が早かった。相手が放った気合玉がダイケンキに直撃した。強烈な衝撃波で、ダイケンキばかりでなく、トウヤも吹き飛ばされる。その様子に気付いたアデクとレンブがトウヤに駆け寄ろうとしたが、トウヤは必死に叫んだ。
    「俺はいいから、トウコを!」
     アデクとレンブは頷くと、トウコに迫るカイリュー達に向かっていった。
    「バッフロン、アフロブレイク!」
    「ダゲキ、インファイト!」
     近距離攻撃でカイリュー達をトウコから引き離そうとするアデク達。しかし、そうはいかなかった。
    「せっかくいい所なんだから、邪魔すんなよ。タイロン、暴風。」
     女が指示すると、今まで傍観していた11体目のカイリューが翼を広げ、強烈な風をピンポイントで放った。完全に不意を突かれた両者のポケモンは、風にまかれて吹き飛ばされる。
    「しまった!」
     邪魔者がいなくなったと判断した2体のカイリューは、トウコに止めを刺そうと迫る。チェレンも必死に助けに行こうとするが、させまいとするカイリュー達の集中攻撃を受けて、身動きが取れない。
    「まずは、英雄かぁ。バイバイ♪」
     一体のカイリューは雷の体勢を、もう一体のカイリューはストーンエッジの構えに入った。
     トウコが、たった一人の姉が死んでしまう!今すぐ駆けつけたいのに、体中を走る激痛がトウヤの動きを鈍らせる。
    「やめろォーーーっ!!!」
     トウヤが叫んだ、次の瞬間—

    「竜の波動!」
     2体のカイリューの真横から竜の波動が飛んできた。すんでの所で気づいた2体のカイリューはその場から飛び離れ、標的を失った竜の波動は地面に当たり、小爆発を起こす。突然の攻撃に他のカイリュー達も動きを止める。
     トウヤが竜の波動が飛んできた方向を見ると、そこには白く輝く翼を持った巨大なポケモン—レシラムと、その背に乗った青年—Nがいた。
    「トウコ!」
     Nはレシラムが着地するのが待ち切れず、その背から飛び降り、トウコの元へ駆け寄った。
    「トウコ、大丈夫かい?怪我は・・・?」
    「・・・・・・」
     いつもより早口気味に問うが、トウコからの返事は無く、うつむいて震えている。よほど恐ろしい目に遭ったのだろう。
    「トウコ、もう大丈・・・」
    「この・・・馬鹿ーーーッ!」
    「うっ!?」
     Nが全て言い終わる前に、トウコのパンチがNのボディーにはいった。
    (うわ・・・、あれは痛い)
     この状況下だが、トウヤとチェレンはNに同情した。トウコは見た目によらず、格闘技が好きなのだ。少女のパンチとはいえ、破壊力は充分だ。
    「ト、トウコ・・・?」
    「・・・あんた、勝手な事ばかり一方的に言って、一方的に出てって、いなくなって、心配掛けて、・・・こんな時に帰ってきて・・・、馬鹿!馬鹿ァ!!」
     トウコは子供のように泣きながらNを叩いている。よほど寂しかったのだろう。Nもそれには気付いたようでトウコに謝った。
    「・・・ゴメン。」
    「謝られても困るの!馬鹿N!」
    「ええ!?」
     じゃあ、どうしろというのだ。そんな思いを抱きながら、Nはトウコをなだめると、女を—シェイラを睨みつけた。
    「どういうことですか、シェイラ!」
    「知っておるのか、あいつを!?」
     Nの言葉にアデクが反応すると、Nはアデクをちらりと見て答えた。
    「・・・ボクが旅をしていた時に、何度かお世話になった人です。」
    「何だと・・・?」
     Nの言葉にアデクは眉をひそめるが、Nは構わず続ける。
    「あなたは、ポケモンの事を大切に思っていて、たくさんの弟子もいた!なのに何故、ポケモンとトレーナーを傷つけるような事をするんですか!?」
    「・・・ゲーチスと一緒さ。利用するために育ててたけど失敗した—それだけだ。」
     シェイラの言葉にNは目をつぶり、ゆっくり開いて、言った。
    「だったら、ボクはボクのトモダチを守るために戦う!トウコはさがっていて!」
     しかし、トウコは首を縦に振らなかった。
    「あんたみたいな馬鹿を一人で戦わせられないわ!お願い、ゼクロム!」
     そして、トウコはゼクロムを—イッシュ地方の伝説に残るドラゴンポケモンを繰り出した。出てきたゼクロムはトウコを見て、次にレシラムを見つめた。無理もない、ゼクロムとレシラムは元は一体のポケモンだったのだ。意識し合うのは当然の事だ。
    「トウコ・・・」
    「肩貸しなさいよ!足挫いて一人じゃ立てないの!」
    「あ、ああ。」
     Nに肩を借りて立ち上がったトウコは、ふっ切れた顔で言った。
    「さぁ、イッシュ地方の英雄の力、見せてやりましょ!」
    「・・・うん!」
                      —続く—
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    mochizo No.10783032 

    引用

    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第45話「ヒウン防衛戦3」

    「おじーちゃん、あそこ!」
    「どうしたアイリス、!あれは・・・」
     ヒウンシティで他のジムリーダーとポケモン達に応戦していたシャガの目に、衝撃的な光景が飛びこんできた。
    「イッシュ建国の2体の竜が共闘しているのか・・・!」
    「やっぱりドラゴンポケモンはなかよしなんだよっ!」

     標的をレシラムとゼクロムに定めた10体のカイリューは、散開して攻撃を繰り出してくる。その内の2体が吹雪と竜の波動を放ってきた。
    「来るわよ、ゼクロム。気合玉!」
    「ヴォーッ!」
    「レシラム、神通力!」
    「クォーッ!」
     白と黒の巨竜の攻撃が相手の攻撃を易々と掻き消す。
    「すごい・・・。」
     トウヤは思わず口にしていた。話には聞いていたが、トウコがゼクロムを出すのすらも初めてだったからだ。おそらくNの事を思い出すからだったのだろう。
    「そうだな、わしらも負けてはおれん!」
    「・・・させるかよ。四天王共を足止めしな。」
     援護しようとするアデク達だったが、シェイラが呼び寄せたポケモン達が一斉に襲いかかる。
    「ぬ?やってくれるわ!行くぞ!」
    「「「「はい!」」」」
     アデクの声に四天王達は短く答え、ポケモン達に向かっていった。
     一方、またしてもカイリュー達は影分身でトウコ達をかく乱しようとする。
    「・・・レシラム、神通力で影分身を打ち消してくれ!」
    「クォーッ!」
     レシラムの放った見えない力が実体のない影分身を次々と掻き消していく。
    「ポケモンの声が聞こえるボクには、影分身は効かないよ!」
     10体のカイリューは互いに小声で意思疎通を図りつつ戦っているようで、Nにとってはその声さえ聞ければ、本物か影分身かは容易く判別できるのだ。
    「トウコ!」
    「うん!」
     2人は顔を見合わせて、指示を叫んだ。
    「クロスサンダー!」
    「クロスフレイム!」
    「ヴォォォォォ!」
    「クォォォォォ!」
     ゼクロムとレシラムが呼応しながら、電撃と炎のエネルギーを収束させ、一気に放った。互いに影響しあい威力を増した2つの技は溶け合い、光の渦となってカイリュー達を飲み込み、爆発した。
     爆煙と光が収まった後、10体のカイリューは全て戦闘不能となり、地面に折り重なるように倒れていた。
    「よくやったぞ、2人共!こちらもけりがついた!」
     ちょうどその頃には、アデクと四天王達がポケモン達を全て打ち負かしていた。
    「あとは、あなただけです。降参してください!」
    「笑わせるぜ。アタシの戦力のほんの5分の1に勝っただけで調子に乗るなんてよ。まぁ、いいさ。アタシの負けにしといてやる。トマホーク!」
     Nの言葉にシェイラはせせら笑うと、オノノクスのトマホークを繰り出した。
    「何をする気だ!」
     アデクがそう叫ぶと、シェイラはニヤリと笑って指示を出した。
    「辻斬り。」
    「オォノッ!」
     指示に従い、トマホークは渾身の辻斬りを横のビルに見舞った。
    「まさか・・・」
     チェレンが呟いた瞬間、辻斬りを受けたビルが傾いた。なんと、根元の方が切断され、ずれているのだ。
    「いかん!このままでは倒れる!カトレア!」
    「はい!ゴチルゼル、サイコキネシス!」
     カトレアのゴチルゼルがサイコキネシスでビルを止めようとするが、質量が大きすぎて止めきれない。
    「ゼクロム、お願い!」
    「レシラム、君もだ!」
     倒れそうなビルをゼクロムとレシラムがなんとか受け止める。
    「ハハッ!じゃあな!」
     シェイラはそう言うと、傍にいるフーディンのサイコキネシスで浮いたまま立ち去ろうとする。
    「逃がさん!ウルガモス、破壊光線!」
     シェイラを逃がすまいと牽制の破壊光線を放ったウルガモス。シェイラはとっさの事に避ける事も出来ず、その直撃を喰らい、フーディンはシェイラを守る事もせず、その場から逃れた。
    「・・・ユだ・・・んしチまったナ・・・」
    「これは・・・機械?」
     破壊光線を受けたシェイラは右肩辺りが完全に吹き飛んでいた。しかし、血は出ておらず、機械がショートする音と電子音が聞こえる。—そう、シェイラだと思っていたのは、シェイラを模した機械人形だったのだ。
    「・・・ポけモン・・・を回収さセ・・・てもらうゾ。」
     機械人形は途切れ途切れにそう言うと、左手で指を鳴らした。すると、ヒウンシティに散らばっていたポーンが一斉に爆発し、シェイラの機械人形も光を放ち、爆発を起こした。その場を轟音と閃光が埋め尽くす。やがて、それらが収まった頃には、倒したポケモン達の姿は影もなかった。
    「・・・シェイラ、あなたは一体・・・」
     倒れそうになったビルをレシラムとゼクロム、そしてカトレアのエスパーポケモンで安全な場所に移動させた後、Nは呟いた。その様子を見て、トウコは気遣わしげな顔をしている。そこへ・・・
    「トウコ!」
    「「トウコ、トウヤ!」」
     トウヤが駆け寄ってきて、更にチェレンとベルも走ってきた。チェレンがNがいる事情をかいつまんでベルに話していると、トウヤがNに言った。
    「N、トウコを助けてくれてありがとう。でも、今度トウコに寂しい思いをさせたら、俺が許さないからな!」
    「・・・うん、分かったよ。もう勝手に出ていかない。」
     Nの返事を聞いてようやく納得した様子のトウヤは、トウコ達の方へと歩いていった。幼馴染同士の会話に入りづらさを感じたNだったが、
    「N、何してんの?おいでよ!」
    「・・・うん!」
     トウコの呼び声で笑顔になったNは、彼女らの元へ歩いて行くのだった。
     —こうして、イッシュ地方は2人の英雄と、多くのトレーナー達の手によって護られたのである。
                       —続く—
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    mochizo No.10783040 

    引用

    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第46話「シェイラ討伐隊」

    『それでは、午前中の対策会議であがりました情報について整理します。』
    「・・・」
     シェイラによるカントー、ホウエン、シンオウ、イッシュの4つの地方への同時攻撃の後日。イヅチは、『シェイラ対策会議—カントー会場』にいた。シェイラの弟子の一人と言う事で、嫌疑もかけられつつの参加になったが、『もしもの時は、私が弁護するわ。』というシロナからの頼みもあって参加したのだ。あれから、ブライ達は帰ってこない。
     そして、攻撃された地方はもちろん、直接攻撃は受けていないジョウト地方もジムリーダーと四天王達が警戒を強めている。その中で、各地方のチャンピオンと実績のあるトレーナーが衛星電話を使いつつ、今後の対策について議論する場が持たれたのだ。
     現在、会場のモニターには、シンオウ地方の代表の一人である国際警察のハンサムと名乗る人物が整理した情報を提示していた。
    『まず、今回の犯行の容疑者は、かつてロケット団に籍を置いていたシェイラの可能性が高いことが判明しています。これは各地方で本人が名乗っている事、彼女と面識のある方からの証言です。』
    『すいません、一ついいですか?国際警察は今回の事を予見できなかったのですか?』
     そう言ったのは、イッシュ地方代表のチェレンだ。
    『それについては、国際警察の方でも監視役をつけ、怪しい行動が無いか観察はしていました。しかし、何の兆候も見られなかったのです。』
    『でも・・・』
    『チェレン、起こってしまった事の責任を追及しておる場合じゃない。これからどうするかを決める場だ。』
     そう言ったのは、同じくイッシュ地方代表で、イッシュ地方のチャンピオンのアデクだ。場が収まるのを待ってから、ハンサムは話を再開した。
    『次に、彼女は同時刻に4つの地方を同時攻撃し、ほぼ同時刻に姿を見せた事です。イッシュ地方の襲撃の際に確認された情報によると、少なくともイッシュ地方の襲撃には、自身に似せた機械人形を用いていたようです。』
    「なるほど、同じ手を使えば他の地方にも同時に攻撃できるな。」
     カントー・ジョウトリーグチャンピオンのワタルは、そういって納得した。
    『また、襲撃を受けた全ての地方で確認された構造物—ポーンは、イッシュ地方にあるトリプルシューターの原理を応用していると思われます。ポーンは簡単な指示を下す他、ポケモンの回復行動やアイテムを収納し、使用する機能まで備わっているようです。
     そして、ポケモン達に下された指示は『破壊』。標的は問わず、民間人からチャンピオンまでを無差別に攻撃しています。
     大爆発を駆使した攻撃やビルを切断して逃走を図ろうとするなど、手段は問わず目的の達成を重視しているようです。
     あと、これも厄介な情報なのですが、ポケモンの集団の中に全体の指揮を取る部隊長的な役目を果たす個体が混じっているようです。現在判明している情報は以上です。』
     ハンサムが提示した情報をもとに、対策会議が本格的に開始された。

    『—それでは、カントー地方4名、ジョウト地方3名、ホウエン地方5名、シンオウ地方5名、イッシュ地方6名、そこに私を加えた計24名による『シェイラ討伐隊』の結成を決定します。』
    「・・・」
    『イヅチ君・・・、本当にいいの?直接シェイラと戦う事になるかもしれないのよ?』
     イヅチの事を心配してか、シロナがモニター越しに声を掛けてくれた。しかし、イヅチの気持ちは固まっていた。
    「俺・・・、今でもちゃんと信じられてないッす。師匠が・・・こんな事をするなんて、だから自分で行って、直接聞きたいッす!」
    『イヅチ君・・・』
    「それは、僕もあるね。彼女はウソをついてる気がする。」
     イヅチの言葉を聞いて、レッドも頷いた。
    「でもよ、肝心のシェイラがどこにいるのか分からなきゃ、どうしようもねぇじゃねぇか。」
     ここでグリーンがもっともな事を言った。確かに姿を消したシェイラがどこにいるか分かっていない。
    『基地にはいたの?』
    『いや、もぬけの殻でした。証拠らしい証拠も見つからなかった。』
     シロナの問いにハンサムは答えた。場にいる全員が頭を悩ませだしたその時—
    『!失礼、どうした?・・・・・・何だと!?』
    『どうしたんですか?』
     ハンサムの元に国際警察のメンバーらしき人物がやってきて、何かを伝えると、ハンサムは顔色を変えた。シロナが尋ねると、ハンサムは深刻な顔をして起こった事を伝えた。
    『・・・シェイラが基地に現れた。』
    「「「「!!!!」」」」 
     その一言に場がどよめく。ハンサムは、場が鎮まるのを待って詳細を話した。
    『先程、シェイラが大型ヘリとポケモン達を連れて基地を強襲した。基地の中には国際警察の特殊部隊がいたが、わずか5分で壊滅的打撃を受け、基地が奪還された。さらに、強力なエスパーポケモンによるテレポートで基地ごと姿を消したそうだ!』
     ハンサムの言葉に全員が言葉を失う。しばらくして、
    「たった一人で国際警察の特殊部隊を壊滅状態か・・・。やっぱ桁違いだな・・・。」
     深刻そうな顔をしたグリーンが沈黙を破った。
    『しかし、基地ごと移動するなど、見つかるリスクも高まるだろうに。何を考えておるのだ・・・?』
     アデクが首を傾げながら呟いた。その時—
    ピルル、ピルルル
    「!」
     イヅチの上着のポケットに入っていたホムンクルスの子機から、メールの着信音が鳴り響いた。皆に了解を得て、メールを確認する。メールは師匠からで、たった一行—
    『なな 分 6』
    とだけ書かれていた。
    「これは・・・?」
     イヅチは文章の意味が分からず、首を傾げた。
                       —続く—
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    mochizo No.10783048 

    引用

    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第47話「魔窟へ」

    「・・・見つけてくださいって言ってるようなものだな。」
     目的地に到着した『シェイラ討伐隊』の一員—アデクは目にしたものに対して率直な意見をした。
     ここはカントー地方の南—ナナシマの6の島。ここに辿り着くきっかけは、グリーンの機転だった。グリーンはメールの意味を、
    『ナナ(シマの) 分(中の) 6(の島)』
    と解釈したのだ。直ちに確認を取ったところ、島の北西部から大量のズバットが逃げて来ており、変化の洞窟の上に建造物が現れたというのだ。
     間違いなく姿を消した基地であると判断した『シェイラ討伐隊』は、直ちに現地に赴いた—という訳である。アデクの言葉通り、基地自体は非常に分かり易く、変化の洞窟に食い込むようにして上に乗っている。これでは洞窟に棲むズバットもたまったものではないだろう。

    「・・・やっと来たか。」
    「おそーい。」
    「あなた達は・・・あの時の!」
     声のした方を見ると、さっきまで誰もいなかった場所にローブ姿の男と少年がいた。それはまさしく『安らぎの間』にいた2人であった。
    「洞窟に入れば、基地の内部へとつながる梯子が奥にある。そこから入れ。・・・辿り着ければの話だがな。」
    「なかでシェイラがまってるよ。」
    「どうして、それを俺達に教える?お前達もシェイラの仲間なんだろう?」
     2人組の言葉に対し、ワタルが身構えながら言った。
    「・・・違う。君達は、ポケモンなんだよね?」
     トウコ達と共に討伐隊に参加していたNが2人組に語りかけた。
    「何だって?」
     驚く一行をよそに、男が静かに言った。
    「どうして分かった・・・?」
    「ボクのトモダチにも君達と同じ特性を持ってる子がいるからね。そうだろう?ゾロアーク、ゾロア。」
     Nの言葉に2人組は黙り込み、笑みを浮かべた。
    「・・・ご名答。」
     男がそう言うと、2人組の周りが歪み出し、2人組の真の姿が浮かび上がった。それは、黒を中心とした体色の幻影を操るというポケモン—ゾロアークとゾロアだった。
    「君達は、ボク達にこの事を教えるために来たのかい?」
     Nが問うと、ゾロアークとゾロアは頷いた。Nは少し彼らと話をすると、他の討伐隊のメンバーに尋ねた。
    「イヅチって、誰かな?」
    「あ、俺ッす。」
     イヅチが手をあげると、Nはゾロアーク達の代わりに教えてくれた。
    「どうやら数時間前に、君の兄弟子達が先に入っていったらしい。それだけを伝えたい、と彼らは言っている。」
    「ブライさん達が!?」
     イヅチが驚きの声をあげた瞬間—
    ズドーンッ・・・
    「「「!!!」」」
     一瞬、地面が揺れ、洞窟の中から轟音が聞こえた。
    「何か動きがあったな!」
     ホウエン地方から参戦したダイゴが洞窟を睨んで言った。
    「どうなっているか分からないが、何もしない訳にもいかない。とにかく洞窟の中に行こう!」
     国際警察のハンサムが提案し、全員が賛成した。そして、辺りを警戒しながら洞窟に入っていった。それをゾロアークとゾロアは見送った後、森の中に姿を消した。

    「これは・・・」
     洞窟の中に入った一行が見たのは、戦闘不能になって倒れたポケモン達だった。おそらく洞窟の警護をしていたポケモン達だろう。
    (・・・ブライさん達だ。)
     状況的にそうとしか考えられない。とりあえず、戦わずに奥まで行けそうだ。そう思った時、岩の陰から数機のポーンが現れ、ポケモン達の回復を始めた。たちまち息を吹き返し、一行を見つけたポケモン達が先へと行かせまいと襲いかかってきた。洞窟の奥でも同じ事が起こっているらしく、かなりの数が迫ってくる。
    「やるしかないか・・・!行くぞ!」
    「待ってくれ、皆。俺達が援護するから、先に行ってくれ。」
     そう行ってポケモンを繰り出したのは、ワタルを始めとした各地方のチャンピオンだった。
    「え?でも・・・。」
    「大丈夫、いくつもの困難を乗り越えてきたおぬし達なら出来る!そう信じている!」
     アデクがウルガモスを繰り出し、自信満々に言った。そこへ、
    「いいな、俺も参加させてもらおう!」
    金髪と緑色の上着を着た男が駆けつけてきた。
    「ダディ!?」
    「クロツグさん!?」
     男の姿を見たシンオウ地方から来たジュンとコウキが驚きの声をあげた。クロツグは2人の姿を見つけると、任せておけと笑った。
    「ジュン!俺の息子だったら、思いっきり活躍してこい!シロナは、ジュン達を頼む!ここは任せろ!」
    「ダディ・・・。分かった!行くぞ、コウキ、ヒカリ!」
    「クロツグさん、頼みます!」
     クロツグの言葉に発起したジュンが先陣を斬って飛び出し、それに続き、コウキとヒカリとシロナ、他のメンバーも続く。
    「さてと、まずは皆がちゃんと基地に入れるように、援護するぞ!」
     援護役と呼ぶには、あまりにも強力なトレーナー達はポケモンを繰り出して身構えた。
                         —続く—
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    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第48話「託されし意志」

     洞窟の奥にあるという基地へとつながる梯子へ向かうイヅチ達。彼らを食い止めようと、次々とポケモン達が襲いかかる。しかし、イヅチ達は怯まず、最小限の攻撃でポケモン達の攻撃をかわしていく。更にワタル達の援護攻撃がポケモン達を撹乱して隙を作る。やがて、ゾロアークとゾロアが言った通り、梯子が見えてきた。その時、地面が大きく揺れた。
    「「「!」」」
     周囲を警戒しつつ一同が立ち止まった瞬間、それは、巨大な金属質の身体を高速回転させながら、イヅチ達の前に姿を現した。
    「バイパー!」
     それは紛れもなく、ロイヤルカップの会場に現れた巨大ハガネール—バイパーだった。この長大な体を突破しなければ、梯子へは辿り着けない。戦う必要を感じ、イヅチ達が構えた瞬間—ハイドロポンプと大文字がバイパーに襲いかかった。
    「ガネェル!」
    「早く行け!若人達よ!」
    「戦いの場へ赴こうとしている者達を邪魔するとは、無粋なポケモンだね。」
     それは、ミクリとアデクによる援護攻撃だった。苦手とする攻撃を喰らい怯んだバイパーの隙を突いて、イヅチ達は梯子へと辿り着いた。ワタル達が激しく戦っている音を聞きながら梯子をよじ登ると、倉庫に辿り着いた。しかし、倉庫の中は物資が散乱し、所々破壊されている。そして、傷付き倒れるブライ達とそのポケモン達がいたのだ。
    「ブライさん!燭陰さん!」
     イヅチは慌てて兄弟子たちに駆け寄る。・・・幸い怪我はしているが、気絶しているだけのようだ。
    「ハン・・・サ・・・ムさん・・・。」
    「大丈夫か!?スレイグ君!何があった!?」
    「すいませ・・・ん。彼女の・・・目的・・・は・・・」
    「もういい!喋るな!」
     必死に何かを伝えようとするスレイグだが、ハンサムは少しでも休ませようと、喋るのをやめるように言った。
    「イヅ・・・チ・・・。」
    「ブライさん!」
     ブライが意識を取り戻したのか、必死に起き上がろうとしている。イヅチは駆け寄って、ブライの身体を支えた。ブライはイヅチにここで起こった事を伝えた。
    「梯子を上がったら、師匠が出てきて、有無を言わさず、戦いになった・・・。俺達は、ゼティス達にやられた・・・。師匠は・・・ここで全てを終わらせるつもりだ。イヅチ、師匠と戦い、師匠を止めろ!今はお前しかいない、今が師匠を超える時だ!」
     必死の形相でそれだけを伝えると、再び気を失ってしまった。
     『ゼティス達』、『全てを終わらせる』、よく分からない事ばかりだったが、イヅチはブライの言葉で覚悟を決めた。
    (・・・師匠を止めるッす。それが弟子としての務めッす!)
     怪我を負ったブライ達の事は、ひとまずチェレンとベルが看る事となり、イヅチ達は先を急ぐことにした。

    「これは・・・、どうなってるッすか?」
     倉庫を出たイヅチの目に飛び込んできたのは、完全に様変わりした基地の内部だった。倉庫を出れば、すぐに居住区があるはずなのだが、そこには、何もない部屋だけがあり、ドアらしきものもない。
    「おいおい、まさか、騙しやがったのか?あのポケモン。」
    「いや違う。彼らは嘘なんてついてないよ。」
     グリーンの言葉をNが否定した。しかし、実際の所、行き止まりも同然だ。すると、突然館内放送が入った。
    『ようこそ、非力なトレーナー諸君、歓迎するぜ。せっかく来てくれたんだ、ゲームでも楽しんでいってくれ。』
     その直後、部屋の天井が開き、謎の装置が出てきた。
    「あれは・・・?」
     装置を見た一同が身構えた瞬間—装置から強烈な光が放たれた。
    「さて・・・、最終決戦開始・・・かな。これでやっと・・・」
     師匠は、基地のコントロールルームでモニターを見ながら呟いた。

    「・・・なぁ、レッド・・・」
    「・・・・・・」
    「俺達、全員で何もねぇ部屋にいたよな?」
    「・・・うん。」
    「今は、俺とお前だけだよな・・・。」
    「・・・そうだね。」
     グリーンは、混乱気味に言った。
    「これって、バトルフィールドだよな?」
    「・・・うん。」
     そう、謎の光を浴びた後、レッドとグリーンは、恐らく別の部屋のバトルフィールドにいたのだ。
    「ああ!もう、訳わかんねぇ!」
     頭を抱えるグリーンを無視して、レッドはバトルフィールドに描かれている地図らしき物を見ながら、グリーンに尋ねた。
    「・・・ねぇ、グリーン。これってどこの地図?」
    「あ?どれどれ。・・・シンオウ地方みたいだな。」
     全く地図に気付いてなかったらしいグリーンはレッドに聞かれ、地図を見て答えた。
    「・・・よく知ってるね。」
    「おめーが普段から地図使わないだけだろ。」
     すると突然、レッド達が立っているバトルフィールドの反対側の床が開き、地下から足場に乗った3体のポケモンが出てきた。
    「ウィ〜ッ、キャ〜ッ・・・。」
     一体はどうやら炎タイプで猿の様な姿をし、酒を飲んでいる。
    「ドダ〜ットス。」
     二体目は草タイプに見えるが、かなり大型だ。
    「ルぺッ!」
     三体目は水タイプだろうか、黒い体と立派な嘴を持っている。
    『ようこそ、近衛武人—シンオウの間へ。ここを通りたくば、この三体、ゴウカザルのばくえん、ドダイトスのなえさく、エンぺルトのシャープを突破しな。そうすりゃ、先に行かせてやるよ。』
     ポケモンが出てきた直後、シェイラが放送で語りかけてきた。
    「・・・倒しゃいいんだな?」
    『そうさ。』
    「じゃあ、ここは俺が・・・って、レッド!」
     グリーンが前に出ようとするが、先にレッドがモンスターボールを取りだした。
    「ここは、俺が先だろ!?」
    「・・・だって、俺が戦った方が早いし。あんまり見ないポケモンだから、戦ってみたいんだ。」
    「お前な・・・。チッ!勝手にしろ!次は俺も戦うからな!」
     呆れながらグリーンはバトルフィールドから離れた。それを見て、相手がレッドだと判断したゴウカザル達は戦う構えに入った。
     そして、レッドがポケモンを出し、戦いは始まった。
                       —続く—
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    mochizo No.10783069 

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    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第49話「近衛武人」

    「コトネ、危ない!」
    「キャッ!」
     ヒビキは、コトネの腕を引っ張ってその場から飛び退いた。直後、コトネの立っていた場所をジュカインが落下しながら斬り裂いた。
    「・・・ギリギリセーフ・・・。」
     ヒビキは背中に冷たいものが走るのを感じながら呟いた。さっきまでコトネが立っていた場所には、斬り裂かれた事によってできた溝が深々と入っている。木や石の床ならともかく、鋼鉄の床にだ。
    (なんて威力のリーフブレードだ・・・。)
     単純な攻撃力ではなく、敏捷性と落下速度を加えたものとは言え、葉っぱで斬りつけているとは思えない。しかし、敵の攻撃は終わらない。今度はヒビキの斜め後ろからバシャーモが足に炎を纏って蹴りつけてきた。
    「オーダイル、アクアテール!」
    「ダイルッ!」
    「バシャアッ!」
     そこへソウルが割り込み、オーダイルで攻撃を加えた。渾身のアクアテールは、ブレイズキックと激突し、水蒸気を巻き上げる。
    「「ソウル!」」
    「油断するんじゃねぇ!てか、お前何でマリルなんて連れてきたんだ!足引っ張るんじゃねぇ!」
     助けに入ったソウルはコトネを睨みながら嫌味を言った。コトネもさすがにムッとして言い返す。
    「マリルだけじゃないですぅ〜。オオタチとかもいますぅ〜!」
    「もういい。お前馬鹿だろ?」
    「何よぉ!」
     いつしか油断するなと言ったソウルとコトネが不毛な言い争いを始めてしまった。その隙にジュカインとバシャーモは、もう一体のポケモン—ラグラージの両腕に乗るというフォーメーションを組んだ。
    「2人とも、喧嘩は後!来るよ!」
    「「!」」
     ヒビキの声で2人が身構えた瞬間、敵は再び攻撃を開始した。
    「ラァァジ!」
     ラグラージが渾身の力で、ジュカインとバシャーモを天井近くまで投げ飛ばす。先程からこの3体は、こうして空中殺法を仕掛けてきているのだ。
     3人は、応戦の構えに入った。

     一方、他のメンバーからはぐれ、ハルカとユウキと一緒に行動していたミツルは、熱を放ちながら迫る巨体から身をかわした。
    「「ミツル!」」
     ハルカとユウキが心配して声をかけてくるが、ミツルは笑顔で無事を伝えた。昔の自分なら、かわせなかっただろう。だが、今はポケモン達が、仲間達がいる。ミツルは、今度はユウキに注意を促す。
    「ユウキさん、後ろ!」
    「!ラグラージ、受け止めろ!」
    「ラージッ!」
    「ケンキッ!」
     ミツルの声に素早く反応したユウキはラグラージに指示を出し、高速で迫っていたダイケンキの角を防いだ。
    「そのまま投げ飛ばせ!」
    「・・・ラァジッ!」
     ラグラージが持ち前の腕力を活かし、ダイケンキの巨体を投げ飛ばす。しかし、その影に隠れるように迫っていたジャローダが飛びかかってきた。
    「バシャーモ、火炎放射!」
    「バシャーッ!」
    「ジャロッ!」
     今度はハルカが攻撃するもすんでの所でかわされる。その隙に、ミツルはハルカとユウキの元へ行き、互いに背中を預けるようにして立った。これは先日の襲撃の際に決めたフォーメーションだ。
    「皆もきっと戦ってる!私達も急ごう!」
    「ああ!」
    「はい!」
     ハルカの言葉にユウキとミツルは頷くと、再び襲いかかってきたエンブオー、ダイケンキ、ジャローダを迎えうった。

    「ゴウカザル、フレアドライブ!」
    「ゴキャアッ!」
    「バクゥゥッ!」
     ジュンのゴウカザルのフレアドライブと、敵のバクフ—ンのかみなりパンチが真っ向からぶつかり、火花を散らす。しかし、威力で勝っているはずのフレアドライブは、押し返されてしまった。
    「・・・またか!おい、そんな鎧装備するとか、罰金だぞ!」
     溶岩の鎧を纏ったバクフ—ンにジュンは文句を言うが、無論、特に意味がある訳ではない。先程から甘ったるい香りがして体が動かしづらく、苛立ちが募っているのだ。しかし、急激に匂いが薄れ、体が動かし易くなっていく。
    「ジュン、お待たせ!」
    「大丈夫!?」
     離れた所で戦っていたコウキとヒカリが駆け寄ってきた。ジュンは息を吐きながら言った。
    「遅せーぞ!でも、サンキュー!」
     コウキとヒカリがさっきまで戦っていた場所には、戦闘不能になったメガニウムとオーダイルが倒れている。先程までの甘ったるい匂いは、メガニウムの甘い香りだったのだ。
     この部屋に飛ばされた時、ジュン達の前にメガニウム、オーダイル、バクフ—ンが立ちはだかった。そして、溶岩の鎧を纏ったバクフ—ンのパワーを見たコウキがある作戦を立てたのだ。それは、一人がバクフ—ンを引き付け、二人が残る二匹を早めに倒し、合流してバクフ—ンを倒す—というものだった。そして、バクフ—ンを引き付ける役はジュンが請け負い、今まで回避優先で戦っていたのだ。
     息を整えながら、コウキとヒカリを見ると、切り傷ができ、泥まみれになっている。ジュンにかかる負担を少しでも減らそうと頑張ってくれたのだろう。ジュンは胸が熱くなり、疲れた体に力がみなぎるのを感じた。
    「よっしゃ!あとはこいつだけだ!2人とも、行くぜ!」
    「「うん!」」
     バクフ—ンに攻撃を仕掛けるジュンに、コウキとヒカリは続いた。

    「・・・・・・」
    「どうしたの?N。」
    「何かあるのか?」
     一同とはぐれ、長い廊下の様な部屋を移動していたトウコ、トウヤ、Nの3人であったが、突然Nが立ち止まったのだ。トウコとトウヤが辺りを見渡すが、白い霧の様なものが充満しており、よく見えない。と次の瞬間—
    —オオオオオオ・・・
    「「「!!」」」
     突然何かの叫び声の様な音が聞こえ、霧が薄まっていく。やがて、霧が晴れ、トウコ達の向かう先に3体のポケモン—フシギバナ、リザードン、カメックスが立ち塞がっていた。
    「・・・どうやら、彼らはボク達を先に行かせるつもりはないようだね・・・。」
     そう呟いたNは険しい顔をしている。トウコは、Nの様子を見て気付いた。
    (そうか、Nはポケモン達の事を傷つけたくないんだわ。それでも、無理をして・・・)
     トウコはNの思いを考えると、胸が締め付けられる思いがした。そして少しでも自分がNの事を支えようと、しっかりとNの手を握った。Nは、一瞬驚いた顔をしたが、少しだけ笑顔を見せると、しっかり前を向いた。トウヤにもトウコの思いが伝わったのか、こちらを見て頷いた。そして、戦いは始まった。
                        —続く—
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    mochizo No.10783079 

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    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第50話「リトル・ゼティス」

    「・・・駄目だ。やはり出入口らしきものは無いな。そっちはどうだい?ゲンさん。」
    「いえ、こっちにもそれらしいものは無いですね。」
    「困ったな。閉じ込められたようだ。」
     ハンサムは困った顔で頭を掻いた。謎の部屋で光を浴び、偶然同じ部屋に飛ばされたハンサムとゲンは行動を共にしていた。
    「ところで、君はどうして討伐隊に?」
     つい職業柄、相手の事を聞いてしまうハンサムだったが、ゲンはごく普通に答えた。
    「どうやら、コウキ君が僕の事をシロナさんに話したらしくて・・・」
    「それで、シロナさんに推薦された、という訳か。なるほど」
     ゲンの答えにハンサムは納得して頷いた。その時、天井からモニターが出てきた。
    『よぉ、ハンサム。来ると思ってたぜ。アタシにやられにな。』
    「シェイラ!」
     モニターにシェイラの顔が映り、話しかけてきた。どうやら監視カメラがあるようだ。
    「シェイラ、出てこい。直接、私と話をしろ!」
     ハンサムの言葉に対し、シェイラは鼻で笑って返した。
    『あんたにわざわざ出張ってまで直接話すほどの価値は無いね。ま、この部屋の番人を倒せたら考えてやってもいいけど。』
    「番人?」
     シェイラの言葉にハンサムは眉をひそめた。この部屋にはそれらしい者はいなかったが・・・、すると、ゲンが叫んだ。
    「ハンサムさん、上です!」
    「!」
     ハンサムが上を向いた瞬間、部屋に鳴き声が響き渡った。
    「エレキッ!!」
    「ブルルルッ!!」
     鳴き声と共に天井が開き、2体のエレキブルが降ってきた。床に降り立った2体のエレキブルは、両手の拳をかち合わせ、敵意をむき出しにしている。
    『そのエレキブルの双子—ボルテーゼとらいもんを倒せたら、次の部屋への入口を開けてやるよ♪』
     そう言うと、モニターの電源が落ちた。
    「・・・やるしかないようですね。ルカリオ!」
    「そうだな。グレッグル!」
    「「ブルルル!!」」
     互いに戦う準備を整えた両者は、激しく激突した。

    —ウィーン・・・
     固く閉じられていた電子ロックのドアがゆっくりと開いていく。
    「やれやれ、なんとか片付いたな。」
     ドアの前まで行き、部屋を振り返りながらダイゴは呟いた。部屋には、ダイゴを足止めしようと襲いかかってきたキュウコンとヘルガーの大群が倒れている。どうやら、自分の得意とする鋼タイプポケモンに対抗するためだったようだが、苦手なタイプのポケモンでの力押しに屈する様な鍛え方はしていない。ダメージを最小限にしようと意識して戦ったため、少し時間はかかったが、ほぼ思い通りの戦いができた。ダイゴは手持ちポケモンの様子を確認すると、次の部屋へと向かった。

    「おーおー、おっかねぇ顔してるな、シロナ。せっかくのゲームだぜ?楽しもうや。」
     他のメンバー同様、別の部屋に飛ばされたシロナは、目の前の人物—シェイラを睨みつけていた。
    「・・・あなたも機械人形なんでしょう?本物のシェイラはどこ?」
    「本物・・・ねぇ。言い子ちゃんのシェイラと、悪〜いシェイラ。どっちが本物かな〜?この部屋を抜けられたら分かるかもな。ただし・・・」
     シロナの言葉に対し、茶化すように返したシェイラの機械人形は指を鳴らした。すると、部屋の天井近くの壁からモンスターボールが飛び出してきた。そして、モンスターボールからガブリアス達が現れた。
    「これは・・・、ゼティス!?いえ、違う・・・ゼティスほど大きくないわ。」
     モンスターボールから現れたガブリアスは全部で20体。しかもその全てが通常のガブリアスよりも大きい。
    「そいつらは、リトル・ゼティス。ゼティスとメタモンを一定の条件下で一緒に過ごさせる事で見つかったタマゴ—そのタマゴから生まれたゼティスの力を受け継いだガブリアス達さ。もちろんゼティスの闘争心もしっかり受け継いでる。それがしょうコ・・・」
     シェイラの機械人形が得意げに話していると、突然、リトル・ゼティスの内の一体が、機械人形の首を撥ね飛ばした。それを皮切りに、他のリトル・ゼティス達が機械人形をズタズタに破壊していく。ほんの数秒で機械人形は鉄屑の山になってしまった。あまりの出来事に言葉を失っているシロナの耳に辛うじて動いている機械人形の首の声が聞こえた。
    「は、はハ・・・。こノ通りさ・・・。こイつらにハ、こノ部屋にアる自分達以外のモのを破壊すルように指示ヲ出してある・・・。せいぜい死ナないように・・・」
     全て言い終わらない内に、リトル・ゼティスの一体が機械人形の首を踏み潰し破壊してしまった。新たな標的—シロナを見つけたリトル・ゼティス達は、地面を踏みならし、雄叫びを上げた。
    (シェイラ・・・、あなたは何を考えているの・・・!)
     シロナは歯を食いしばり、リトル・ゼティス達に立ち向かった。
                    —続く—
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    mochizo No.10783083 

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    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第51話「古の覇者」

    「また、扉ッす。」
     謎の光に飛ばされたイヅチは、一つの扉だけがある部屋にいた。とりあえず扉を開けて先へ進んできたのだが、既に同じ造りの部屋を4つ通ってきている。これでまた似たような部屋なら、戻って他に出入りできる所がないか調べよう・・・、半ばそう思いながら、イヅチは扉を開けた。
    「!」
     そこは、今まで通ってきた部屋とは違い、何かの研究室の様な部屋だった。ただし、機材らしきものは撤去された後らしく、何らかのカプセルが部屋の端と中央に並び、中央のカプセルはライトで照らしだされ、中身が見えている。何気なく中央のカプセルに近付いていくと、カプセルは開き、中の物に触れるようになっている。そして、肝心のカプセルの中身は—
    「虹色の・・・羽根?」
     霞んではいるが、確かに虹色の光を放っている羽根だ。思わず手に取って見ると、汚れている訳ではなく、むしろ光が消えかかっているように感じた。イヅチがカプセルの中に羽根を戻そうとした瞬間—
     部屋の壁沿いに設置されていたカプセルが次々と割れ、中からポケモン達が現れた。
    「あれは・・・カブトプス?プテラも!」
     カプセルから姿を現したのは、既に絶滅し、化石の状態でしか見つからない古代ポケモン達だ。彼らは、侵入者であるイヅチに剥き出しの敵意を向けて近づいてきた。
    「ギャオオスッ!」
     イヅチがモンスターボールに手を掛けるのと、プテラが一声吠えて古代ポケモン達が一斉に襲いかかったのは、ほぼ同時だった。
    「クッ・・・!」
     一応、部屋の奥にはシャッターらしきものが見えるが、古代ポケモン達を何とかしないとどうにもならない。イヅチはポケモンを繰り出して、古代ポケモン達に向かっていった。

    「アーマルド、水の波動!」
    「マルドッ!」
    『イヒヒヒヒ、ミカッ!』
    「グゴォォォァァッ!」
     アーマルドが放った水の波動は、相手が放った悪の波動で容易く打ち消されてしまった。
    「さっきの部屋は、ほんの小手調べといったところかな・・・。しかし、これは性質が悪い!」
     ダイゴはそう言うと、アーマルドと一緒に飛び退いた。直後、ダイゴがいた場所を巨大な脚が踏みつけた。
     緑色の鎧を纏ったような巨体と長く太い尻尾、凶悪そうな顔、バンギラスと呼ばれるポケモンだ。ただし、ただのバンギラスではない。
    『イヒヒヒ・・・』
     バンギラスの背中から不気味な笑い声が聞こえる。無論、バンギラスの声ではない。バンギラスの背中に御影石ごとくっついたミカルゲの声だ。見た目からして充分異様だが、近づけばミカルゲの影討ちとバンギラスのなし崩しを受け、離れれば2体同時の悪の波動やストーンエッジなどで狙い撃ちにされるのだ。更に、ミカルゲが背後をカバーしているため、死角らしい死角がほとんどない。相手をする方からすれば、ダイゴの言った通り、かなり性質の悪い相手と言えるだろう。
    「・・・ならば、分断して各個撃破するだけだ。行くぞ、アーマルド、メタグロス!」
    「マルド!」
    「メタッ!」
     ダイゴは、アーマルドに続き、相棒のメタグロスも繰り出し、反撃に転じた。

    「スカイアッパー!」
    「シャモォッ!」
    「ブオォッ!」
     最後まで残っていたエンブオーの顎にバシャーモのスカイアッパーが直撃し、巨体を打ち上げる。受け身も取れず落下したエンブオーは、とうとう力尽きた。
    「はぁ、やっと終わったよ・・・。」
    「皆、大丈夫か?ちょっとだけ休もう。」
    「はい。でもポケモン達が襲ってこないか注意してましょうね。」
     ようやくハルカ達は、最初の部屋での戦いに勝利する事が出来た。見かけによらず敏捷だったエンブオーや突破力のあるダイケンキには苦戦を強いられたが、上手く相手のリズムを崩して倒す事が出来たのだ。
    「よし、じゃあ、行こう!」
     エンブオー達が起きてこないか注意しながら、少しだけ休憩した3人は、次の部屋への扉を抜けた。
     扉の先の部屋は、どこか遺跡を彷彿とさせるような空間だった。しかし、見渡しても敵らしきものはいない。そればかりか、扉らしきものすらもない。
    「行き止まりかな?」
    「でも、一本道でしたよ?」
     ユウキの言葉に対して、ミツルが首を傾げた。その時—
    —バッコォォン
    「「「!!」」」
     石を積み上げた壁を突き破り、大型のポケモンが姿を現した。黄色い体と巨大な牙が特徴的だ。更にその後ろから2体のポケモンが続く。
     そして、巨大な牙のポケモン—オノノクスのトマホークがハルカ達を視界におさめ、雄叫びをあげた。トマホークに続いて部屋に入ってきたバルジーナとウォーグルも鳴き声をあげる。
    「オォォォノッ!!」
    「ジーナァ!」
    「ウォーグッ!」
     それだけで、ハルカ達は一瞬体が硬直した。かなり危険な相手である事に本能的に悟る。
    「2人とも、気をつけて!かなり強そうよ!」
    「分かってる!一気にケリをつけよう!」
    「はい!」
     既に戦いで消耗している以上、長期戦に持ち込まれたら勝ち目は無い。多少無理をしても短期決戦に持ち込むべきだと判断したハルカ達は、相棒のバシャーモ、ラグラージ、サーナイトを繰り出して、先制攻撃を仕掛けた。
                    —続く—
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    mochizo No.10783089 

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    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第52話「絶対狂者」

    「はぁはぁ、か、勝った・・・!」
    「やったね!」
     ジュカイン、バシャーモ、ラグラージの巧みな連携攻撃に窮地に立たされたものの、思いのほかまとまっていたチームワークのおかげでヒビキ達は辛くも勝利する事が出来た。
    「よし、じゃあ、行こう。」
    「うん。」
     持ってきたアイテムでポケモン達を回復させた後、ヒビキ達は次の部屋へと向かった。
    「・・・うっわ、気味悪〜い。」
     次の部屋に入った途端にコトネが嫌悪感を露わにして呟いた。その意見に対してはヒビキも同感だった。そこは、土が運び込まれ、特有の湿気と立枯れた木が植えられており、さながらホラー映画の舞台のようだ。
    「フンッ!情けない奴だ・・・。単なるこけおどしだ。」
    「だといいんだけどね。」
     ソウルの言葉にヒビキは注意を促すように返した。
    「シャギャアァァァァ・・・」
    「キャア!」
     突然響いてきた不気味な鳴き声にコトネは身をすくませる。しかし、ヒビキとソウルは怯まずに鳴き声の聞こえた天井の方を向いた。
    —バサッ、バサッ
     耳を澄ませると、複数の羽音が聞こえ、徐々に降下して近づいてくる。そして、その時は訪れた。
    「シャギャアァァァァァッ!!」
    「「ギャガァァァァ!!」」
     3本首の不気味なドラゴンポケモン—サザンドラと、2頭のボーマンダが現れ、吠え声をあげた。
    『よくここまで来れたな。サカキの息子〜。』
     3人の耳に部屋に仕込まれているスピーカーからシェイラの声が聞こえた。『サカキ』という言葉に、ソウルは途端に感情的になった。
    「うるさい!俺の名前は、ソウル!あいつの事は関係ない!」
    『何マジになってんだよ〜。実力同様にお子様だな。』
    「何だと!」
    「ソウル、落ち着いて!挑発に乗っちゃ駄目だ!」
    『なんだ、ライバルの方がよっぽど大人じゃないか。でも、それだけじゃこの部屋は抜けられないけどな!』
     シェイラの話が終わった瞬間に相手の攻撃が開始された。3体のドラゴンが一斉に遠距離攻撃を放ってきた。それに対し、ヒビキ達も素早くポケモンを繰り出し、応戦する。しかし、体の大きさがほぼ同じの2体のボーマンダは、お互いの位置を巧みに入れ替え、ヒビキ達を翻弄するかのように攻撃を加えてくる。更に、サザンドラは3本の首を器用に使い、種類の違う技を同時に放ってくる。
    「うわっ!」
     強烈な攻撃を立て続けに喰らい、ヒビキ達は壁際に追い詰められていく。ヒビキ達が既に消耗している事に気付いたのだろう。2体のボーマンダは、それぞれ竜の波動とストーンエッジを放ち、サザンドラは強烈な破壊光線を放った。それらの攻撃は、まっすぐにヒビキ達を狙っている。
    「2人とも、俺の後ろに!」
    「「!」」
     ヒビキが2人に向かって叫び、モンスターボールを取りだした。そこへ3体のドラゴンポケモンの攻撃が襲いかかる。
    —ガキィィン・・・
     しかし、それらの攻撃全てがヒビキの前で見えない壁に跳ね返されたかのように弾けた。
    「シャギャッ!?」
     まさか防御されるとは思っていなかったのだろう。ドラゴンポケモン達は、咄嗟に距離を取った。
    「間に合った・・・。ありがとう!」
     そう言ってヒビキは新たに繰り出したポケモンに礼を言った。すらりとした4本の脚、紫色のたてがみ、そして水晶のような輝きを放つ頭部の冠状の角—ジョウト地方で北風の化身と呼ばれるポケモン、スイクンだ。スイクンの守るが全ての攻撃を防いだのだ。
    「2人とも、ここから反撃していくよ!」
    「うん!」
    「当たり前だ!」
     相手の攻撃を完全に防いだ事で、希望が生まれた。ヒビキ達はそれを糧にドラゴンポケモン達に向かっていった。

    「リザ—ドン、ブラストバーン。」
    「リザッ!」
    「ドダァ〜ッ!」
     炎タイプ最強クラスの技を至近距離でくらい、最後まで耐えていたドダイトスも戦闘不能になった。
    「ありがとう。戻って、リザ—ドン。」
     レッドが戦い始めて、まだ5分と経っていない。相手も研ぎ澄まされた技で反撃しようとしたが、レッドはもろともせずに一気に決着をつけてしまったのだ。
    「そんなにとばすと、もたねーぞ。」
     グリーンが溜め息をつきながら言うと、レッドは平然として言った。
    「まだ大丈夫。疲れないように戦ったから。」
     本人はさも簡単そうに言うが、それは非常に難しい技術だ。おそらく厳しい環境のシロガネ山で修行しているうちに身に付いたのだろう。
    (俺も負けてらんねぇな。帰ったら、トレーニングの仕方、考え直すか。)
    「何してるの?置いてくよ。」
    「ちょっ、待てっつの!」
     そんな事を考えているうちにレッドは、次の部屋につながる扉の前まで行っていた。
    「ここはここで、なんもねぇな。」
    「・・・・・・」
     次の部屋に着いたグリーンは率直な意見を述べた。そこは、広く、城壁の様な壁に囲まれた無機質な部屋だった。見た所、扉も自分達が入ってきたものしか見当たらない。よく調べようと奥まで進むと、入ってきた扉の前に鋼鉄の壁が降りてきて、部屋の中に閉じ込められてしまった。
    「しまった!罠か!」
    『んなもん使うか、バーカ。』
     グリーンの言葉をシェイラの放送が否定した。
    『さすがだな、レッド。アタシの自慢のポケモンを瞬殺とはな。』
    「・・・シェイラは、何がしたいの?」
     シェイラの言葉を無視して、レッドは自分の聞きたい事を伝えた。すると、シェイラは笑いながら言った。
    『して言えば、お前が苦しむ様が見たいかな。ここまでアタシをコケにした報いとしてな。』
    「・・・やっぱりウソついてる。どうして?」
     シェイラの言葉に全く動ずることなく、レッドは再び尋ねる。
    『どうしても知りたいなら、この部屋を突破して直接訊くんだな。生きていられりゃの話だが。』
     シェイラがそう言い終わると同時に、床から柱の様なものが出てきた。よく見ると、先端にはアームがあり、モンスターボールがセットされている。そして、アームの指がモンスターボールのボタンを押した。すると、モンスターボールが震え始め、亀裂が入っていく。そして、まるで中のポケモンに食い破られるかのように爆発した。
    「「!!」」
    —ズン・・・
     そして、モンスターボールの中にいたポケモンの姿が露わになった。黒みがかった巨体、巨大な背ビレ、強靭な腕や脚、そして、大きく裂けた顎—そう、そのポケモンとは・・・。
    「「ゼティス・・・!」」
    「グガアァァァァァァァッッ!!!」
     レッドとグリーンの言葉に反応するかのように、ゼティスは咆哮した。
                       —続く—
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    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第53話「奈落への誘い」

     自身の入っていたモンスターボールを破壊し、ゼティスはレッドとグリーンの前に現れた。そこへシェイラの声が聞こえてきた。
    『たった今、ゼティスはアタシの手持ちポケモンじゃなくなった。つまりは、アタシが捕獲する前の凶暴な怪物になったのさ。さぁ、せいぜい足掻いて、アタシを楽しませてくれよ!』
     シェイラが話し終わると同時に、ゼティスの狂気をはらんだ目がレッドとグリーンを捉えた。ゼティスは舌なめずりをすると、笑い声をあげた。
    「グカカカカカカカッ!!」
    「・・・!」
     その瞬間、レッドの身体に強烈な悪寒が走った。鎖に繋がれていた化け物が解き放たれた感覚—考えるよりも先に体が動いていた。
    「どうした?レッ—」
     グリーンがレッドの異変に気付き、話しかけようとした瞬間—グリーンの身体は一気に空中へ引っ張り上げられた。その直後—
    —バゴン・・・
     轟音と共にゼティスがレッド達の後ろの壁に激突した。その一撃で城壁の様な壁が深々と抉られた。とっさにレッドがグリーンの腕を掴み、リザ—ドンで空中に逃れていなければ、ひとたまりもなかっただろう。
    「あ、あぶねぇ・・・!助かったぜ。でも、よく分かったな?・・・レッド?」
    「ハッ・・・、ハッ・・・」
     異変に気付いて見上げるとレッドは目を見開き、ガタガタと震えていた。
    おそらく、ゼティスにあらん限りの殺意を叩きつけられ、死を感じたのだろう。直接は狙われていないグリーンですら感じられたのだ。標的となったレッドはどれほどの恐怖を感じたのだろう。完全にレッドは恐怖で固まってしまっている。追撃がくるとまずい。グリーンは腕を掴まれたままで、レッドに声をかける。
    「レッド、おいレッド!しっかりしろ!おいっ!」
     しかし、恐怖で固まっているレッドには届かない。
    「グカカカッ!」
     そうしているうちにゼティスが驚異的なジャンプ力で跳びかかってきた。あのパワーで攻撃されては、ただでは済まない。
    「レッド!聞こえるか、レッド!!」
    「ピカッ!」
     すると、突然ピカチュウが自分から出てきて、レッドの頬を尻尾で思いっきり叩いた。
    —パシン
    「!」
     ピカチュウの喝でレッドは、恐怖による硬直が解けたようで、素早くリザードンに指示を出す。
    「リザ—ドン、急降下!」
    「リザァッ!」
    「いいっ!?」
     間一髪で凄まじい勢いで迫るゼティスをかわし、リザードンは地面に降り立った。
    「・・・マジ死ぬかと思った・・・。」
     再び轟音を立て、今度は天井に激突したゼティスを見てグリーンは呟いた。
    「グリーン・・・」
    「あ?」
     レッドは深呼吸すると、いつもの調子で言った。
    「助かった。一応、ありがとう。」
    「・・・あとで何か奢れよ。それより、まずは・・・」
    「うん、あいつをぶっ飛ばす。」
     ズンッと音を立てて、ゼティスが地面に降りてきた。
    「グガァァァッ!」
     ゼティスは再びレッドに殺意を向けてくるが、彼はもう怯まない。レッドとグリーンはポケモンを繰り出し、同時に言った。
    「「行くぞ!」」

    「バクゥゥ・・・」
     コウキ、ジュン、ヒカリの連携攻撃によって、溶岩の鎧を剥がされ集中攻撃を受け、バクフ—ンも崩れ落ちた。
    「よっしゃあ!やってやったぜ!」
    「ふぅ。」
    「大勝利だね!」
     戦いを終え、3人が一息ついていたその時—
    『ポケモンの回収開始。』
     天井からポーンが出てきて、倒したばかりのポケモンをモンスターボールに戻してしまった。そして、直後、床が振動しながら開いていく。
    「何だってんだよッ!?」
    「これは・・・」
     そこに現れたのは、部屋の半分ほどもあるプールと浮島だった。しかも、次の部屋に向かうには、プールを渡らないと辿り着けないようになってしまった。
    「・・・しょうがない。渡っていくしかないね。」
    「おっしゃ、行くか!」
     コウキとジュンが浮島へと向かおうとすると、ヒカリは何かに気付いた様子で叫んだ。
    「水の中、何かいるわ!」
    「「!」」
     2人がプールを見るよりも早く、それは飛び出した。青い流線型の身体と銃のようにも見える頭部を持ったポケモン—キングドラだ。キングドラは飛び出すや否や冷凍ビームを放ってきた。狙いはヒカリ、突然の襲撃でありながら、ヒカリは大怪我はしなかった。ただし、冷凍ビームで床ごと靴が凍らされ、身動きが取れなくなってしまった。
    「しまった!」
    「ヒカリ、大丈夫か!?」
     コウキとジュンがヒカリに駆け寄り、安否をうかがう。幸い動けなくなった以外に怪我はなさそうだ。
    「でも、困ったね。これじゃ、溶かすのに時間がかかりそうだよ。」
    「俺達は大丈夫でも、ヒカリは動けねぇからな。」
     そもそもあの様子では氷を溶かす作業を安全にやらせてくれる保証は無い。キングドラを追い払うか、倒すかしないと先には進めない。
    「コウキは、ヒカリを頼む!俺がキングドラを引き付けるぜ!」
    「でも・・・」
    「ただし、さっさと溶かさないと罰金だからな!」
    「・・・うん、分かった!気をつけてね!」
    「おぅ!」 
     コウキの言葉にジュンはしっかりと頷いた。
                         —続く—
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    mochizo No.10783111 

    引用

    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第54話「天変地異の舞」

    「ごめん、ごめんね・・・。」
     Nは先程まで激戦を繰り広げていたポケモン達—フシギバナ、リザ—ドン、カメックスに謝っていた。しょうがなく戦闘不能にしたが、なるべく無駄な怪我をさせないように配慮はしたつもりだ。しかし、実際の所、そのような事は欺瞞でしかない。ポケモンバトルをした以上、負けたポケモンが傷つくのは避けられないからだ。
    「N・・・。」
     そんなNにトウコは気遣わしげな視線を送っている。一方、トウヤはそんな姉を微妙な表情で見ている。その後、次の部屋への扉が見つかり、トウコ達は先を急いだ。扉を開けた瞬間—戦いの音が奥から聞こえてきた。かなり激しい戦いのようだ。
    「トウコ・・・!」
    「うん、行こう!トウヤいい?」
    「もちろん。」
     トウコ達は戦いの場へと急いだ。

    「2体のエレキブルの次は、これか!かなり手強いっ!ルカリオ、波動弾!」
     ゲンはルカリオに指示を出し、敵の気合玉と波動弾をぶつけて相殺した。一緒に行動しているハンサムも苦戦しているようだ。
     最初に飛ばされた部屋で双子のエレキブルを倒してからこの部屋に来たのだが、10体のカイリューが円陣を組み、さらに親玉的存在のカイリューが全体を見ている。一体を退けても、もう一体が攻撃してくる。さすがに元々強いポケモンなので、多くいると正直つらい。
     すると、突然敵からの攻撃がやんだ。何事かと思ってみると、離れてしまっていたトウコ達が合流してきたのだ。
    「ハンサムさん!大丈夫ですか?」
    「ああ、助かるよ。2人で戦うには大変な相手だったからね。—まぁ、君達も知っているだろうが。」 
     トウコ達が駆け寄ってくると、ハンサムは安堵した表情になった。
    「また、あいつらか!しつこい連中だな。」
     トウヤがダイケンキを繰り出して呟いた。前回は翻弄されてロクに攻撃できなかった。だが、今回はそういう訳にはいかないのだ。トウコとNもゼクロムとレシラムを繰り出して、戦闘準備万端だ。
    「天変地異の舞・・・?」
     突然、Nが聞き慣れない言葉を発した。トウコは嫌な予感がして、聞いてみた。
    「・・・どうしたの?」
    「あのカイリュー達が小さな声で言ってるんだ・・・。何か危ない気がする!」
     Nがそう言ったのとほぼ同時に10体のカイリュー達は、リーダーと思われる大柄のカイリューの周りをグルグル回るように飛び始めた。次第に回転は加速し、ある一定の速度に達した瞬間—攻撃は始まった。
     10体のカイリューがそれぞれの技を繰り出し、大柄のカイリューが暴風を使用した。回転によって混じり合った様々なタイプの技が暴風により、予測不能な動きで襲いかかる。大文字が、雷が、吹雪が、気合玉が入り混じったエネルギーの塊が暴れ狂う。
     とっさにゼクロムとレシラムに守られる形で攻撃を防いだが、ゼクロムとレシラムが受けたダメージは軽くは無い。
    「トウコ、このままじゃ耐えきれないよ。」
    「分かってる!」
     トウコはそう言いつつ突破口が見いだせずにいた。
    (とりあえず、あの10体をバラバラにしないと・・・、でもどうやって?)

    「これでっ、5体目!!」
    「シビィルッ!」
    「グガァァ・・・!」
     一瞬の隙を突いたシビルドンのドラゴンクローが5体目のリトル・ゼティスの体力を削りきった。リトル・ゼティスは、勢い良く倒れ、戦闘不能となった。
     だが、まだ15体も残っている。しかもいずれもガブリアスとして考えるなら、規格外と言ってもよいほどの戦闘能力を持っているのだ。最初は、シェイラとの戦いのために力を温存しようとも考えていたが、全力で戦わねば倒しきれなくなってきていた。アイテムの使用なども辛うじて出来る状態で、少しずつ消耗し始めていた。
    「戻って、シビルドン。ガブリアス、ドラゴンダイブ!」
    「ガブッ!」
     シロナは素早くシビルドンを戻すと、ガブリアスのドラゴンダイブで3体のリトル・ゼティスを吹っ飛ばした。しかし、吹っ飛ばされたリトル・ゼティス達は、無傷ではないがすぐに起き上がり、敵意をむき出しにして迫ってくる。
    (さすがはゼティスの血をひいているだけの事はあるわ・・・。戦闘能力だけじゃなく、性格も受け継いでるのね・・・。)
     地震で攻撃すれば、一度に多くのリトル・ゼティス達を攻撃する事は出来るが、相手に全員揃っての地震を逆に返されては、意味が無い。だから、なるべく少数ずつ撃破しようと、シロナは考えたのだ。しかし、小さな集団に分けて攻撃するのは決して容易な事ではない。リトル・ゼティス達自身の移動速度が速く、こちらの思うようにいかないからだ。一時は分断できたと思っても、気がつけば囲まれている状況が何度か続いている。
    「だったら、これでどうかしら?ミロカロス、吹雪!!」
    「「「グガァァッ!」」」
     シロナを取り囲むように接近してきた3体のリトル・ゼティスは、まともに吹雪をくらい、氷漬けになってしまった。
    「これで、8体!」
                        —続く—
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    mochizo No.10783119 

    引用

    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第55話「オーバーキル」

    「カイリキー、地球投げ!」
    「カビゴン、吹雪!」
     突っ込んでくるゼティスに対し、グリーンのカイリキーは重力を活かし、地球投げでゼティスを天井高く投げ飛ばした。更に空中で、レッドのカビゴンの吹雪が直撃した。
    「これならどうだ!」
    「・・・・・・」
    —ズズーン・・・
     しかし、ゼティスは空中で体勢を整え、あっさりと着地してみせた。
    「グガガガ・・・」
    「なんて奴だ・・・。まだピンピンしてやがる。」
     グリーンがそう言うのも無理もない。今まで何度も強力な攻撃を僅かな隙を縫って叩きこんできたのだ。それこそ苦手とする氷タイプの技も、5回以上当てている、にも関わらず、ゼティスはまったく弱った様子が見えないのだ。だが、その時は突然訪れた。
    「グッ・・・ガガ・・・グォガガガガガッ!!!!」
     ゼティスが体に尋常でないほどのエネルギーを纏い、雄叫びをあげる。
    溢れだすエネルギーは火花を散らし、その双眸には怒りが宿っている。
    「・・・逆鱗かっ!」
     ドラゴンタイプ最強クラスの破壊力を持つ技—逆鱗。ただでさえ威力がある技をゼティスほどの巨体が使ったら、どれほどの威力になるか想像もつかない。
    「グォォルガガガガガ!!」
     ゼティスが一歩を踏み出す。それだけで床が軋み悲鳴を上げる。そして、ゼティスは怒りの矛先をレッドに向けた。思いっきり踏みしめる足元の鋼鉄板が、強烈なエネルギーと馬鹿力で変形する。
    「グォガガガガ!!!」
     踏みしめた脚から爆発的な加速を生みだし、ゼティスはレッドに迫る。
    「カビゴン、受け止めろ!」 
    「カビィッ!!」
    —ドズン・・・
    「・・・カビィィッ」
     圧倒的な力の塊を前に、460kgにもなるカビゴンが押し切られそうになる。実際はカビゴンも力を込めているはずなのだが、ズルズルと後ずさっている。
    「カイリキー、カビゴンを援護しろ!」
    「リキッ!」
     グリーンのカイリキーが、カビゴンの背中を全力で押してゼティスを押し返そうとする。しかし、それでもゼティスの力の方が強く、ゆっくりと押され始めた。
    「レッド、やべーぞ!このままじゃ押し負ける!」
    「ピカチュウ、でんこうせっか!」
    「!?」
     この期に及んでピカチュウ程度の力でどうしようというのだ。とてもゼティスには敵わないはずだ。そんなグリーンの思いをよそに、ピカチュウはゼティスの目の前に飛び出した。
    「そこだ!アイアンテール!」
    「ピッカァ!」
     ピカチュウの渾身のアイアンテールは、ゼティスの下顎に直撃した。途端にゼティスの体から力が抜けた。
    (そうか!脳を揺らして動きを鈍らせたのか!)
     いかに強力な力を持とうと、それを動かす脳に異常が起こっては満足に力を振るえなくなる。レッドはそこを突いた訳だ。おかげでカビゴンとカイリキーの力がゼティスを上回り、渾身の力でゼティスを突き飛ばした。
    「グゴガァァッ!」
     ゼティスが悲鳴をあげながら派手に転倒する。
    「おっしゃあ!ざまーみやがれ。」
    「・・・いや、まだ来るよ。」
     歓声をあげるグリーンをレッドが制した。
    「グルゥガガガガガガッ!!!」
     ゼティスが怒りに燃えながらゆらりと立ち上がる。そして、顎を開き、凄まじい勢いでエネルギーを収束させていく。
    「何か撃ちだす気だぞ!」
    「・・・ラプラス。」
     レッドがラプラスを繰り出した直後、ゼティスは溜めこんだ逆鱗のエネルギーを逆鱗砲として放出した。大気が震え、おびただしいほどの熱が渦を巻く。しかし、逆鱗砲がレッド達を穿つ事は無かった。
    「ラプラス、サイコキネシス。」
    「クーッ!」
     ラプラスの放った念力がゼティスの頭部を動かし、逆鱗砲の軌道を逸らしたのだ。通常なら力ずくで軌道修正する事が出来るゼティスだが、先程のアイアンテールが効いているのか、頭を微かに動かすだけだ。標的を失った逆鱗砲は、天井や壁を融解させ、突き抜けていく。

    「ドラッ!」
    「うわっ!」
     一方、足が凍りついて動けなくなったヒカリのフォローをするためにキングドラの気を引き付けていたジュンは窮地に陥っていた。相棒のゴウカザルはキングドラとの相性は悪いうえ、強烈な水中からの攻撃を受け続けていた。そこへ待ちに待った声が飛んできた。
    「ジュン、ヒカリの氷はもう解けたよ!」
    「分かった!サンキューな!」
     これでやっと本気で戦う事が出来る、とはいえ、プールに潜って行動されては手の出しようがなく、3人揃って窮地に陥ってしまった。一応、ヒカリのポッチャマも水中で行動できるが、キングドラを相手にするのは酷だろう。
    (クソッ・・・水さえ無けりゃ・・・!)
     ジュンがそう思った瞬間だった。
    —ズドオオオオ!
    「「「!」」」
    「!?」
     突如としてプールに光の柱が立った。そして、プールの底に穴が空き、水があっという間に減っていく。突然の事に慌てたキングドラが思わず跳ね上る。直後、自分の行為の愚かさに気付き、エネルギーを蓄積し始めるが、既に遅い。
    「ドダイトス、種爆弾!」
    「ゴウカザル、マッハパンチ!」
    「ポッチャマ、水の波動!」
     3人のポケモン達の猛攻を受け、キングドラはエネルギーの暴発で吹き飛び、気を失った。
    「おっしゃー!倒したぞ!!やったな、コウキ、ヒカリ!」
     3人は互いに抱き合って喜んだ。光の柱の助けはあったものの、自分達は勝利したのだ。これで先へ進めるはずだ。コウキ達は着実にシェイラに近付いていた。
                          —続く—
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    mochizo No.10783131 

    引用

    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第56話「加速的崩壊」

    「グガッ・・・ガガガッ」
     ただでさえ体力を削る逆鱗砲を力尽くで逸らされ、ゼティスは一時的にエネルギー枯渇状態になっている。
    「今だ、決めるぜ、レッド!」
     ゼティスの様子を見たグリーンがナッシーを取り出してレッドに言うと、
    「うん。」
     レッドはラプラスと共に頷いた。
    「ナッシー、ソーラービーム!」
    「ラプラス、吹雪!」
     2体の強力な攻撃がゼティスに命中し、炸裂した。
    「グガァァァ・・・・・・!」
     断末魔の悲鳴と共にゼティスの身体から力が抜け、崩れるように倒れた。グリーンは暫く目の前の光景が信じられなかった。正直言うと、こんな化け物が倒せるのかと思っていたのである。
    「ところで、こいつが出てきたって事は、シェイラが近いんじゃないか?」
     グリーンがそう言うと、レッドは頷いて言った。
    「うん、そんな気がする。」
    「よし、さっきので壁に穴が空いてるからそこから行こうぜ。この部屋には扉は無さそうだしよ。」
    「・・・うん。」
     壁の穴に向かって歩き始めたグリーンの後に続くレッドの耳に微かな物音が聞こえた。ほんの僅かだが、これは・・・殺気?
     狙いがグリーンだと判断するより先に足が動いていた。まったく気付いていなかったグリーンを全力で突き飛ばす。直後、レッドは左肩に焼けるような痛みを感じた。
    「レッド!!」
     後ろから突き飛ばされたと分かった瞬間には、既にレッドは傷を負っていた。力を振り絞って起き上がったゼティスが、自分に襲いかかったのだ。それを庇ったレッドの左肩にゼティスの牙が当たり、切れてしまったようだ。
    「このっ!」
     ギャラドスを繰り出し、ハイドロポンプで狙うがかわされ、ゼティスは壁の穴から逃げ出してしまった。
    「レッド、大丈夫か?オイ!」
    「うん、大丈夫・・・そんなに深くないから。」
     そうは言うが、肩からは出血している。グリーンはハンカチを取り出すと、応急処置をした。
    「大丈夫なのに・・・。」
    「うるせー。血ィ出てんだろ。・・・これでよしっ。」
    「・・・・・・」
    「じゃあ、行くか。脱出するにしても戦うにしてもここじゃ話にならねぇ。」
    「うん・・・。」
     こうして、レッドとグリーンはゼティスに勝利したのであった。

    「うっ!」
     間一髪で横を飛んでいった悪の波動にミツルは背筋が寒くなるのを感じた。2体の飛行タイプポケモンが撹乱し、攻撃力の高いドラゴンポケモンがとどめをさす。そういった作戦なのだろう。そこまでは分かっているが、反撃のきっかけがつかめない。どうやらハルカとユウキも同じようだ。
     攻撃を避けているだけでは話にならない。何か、チャンスを見つけなければ・・・ミツルがそう思った瞬間—
    —ズドオオオッ
     壁から強烈な熱線が飛んできて、バルジーナに直撃し、ウォーグルの翼に命中した。バルジーナは、その一撃で崩れ落ち、ウォーグルは地面へと落下した。
    「オォノッ!?」
     事態が呑み込めず、オノノクスの動きが止まった。何が起こったかはこちらも気になるが、これは大きな隙だ。
    「バシャーモ、スカイアッパー!」
    「バシャアッ!」
    「オノッ・・・!」 
     ハルカのバシャーモの強烈なスカイアッパーが決まったが、オノノクスは辛うじて踏みとどまる。更にそこへユウキが畳みかけた。
    「ラグラージ、冷凍ビーム!」
    「ラージッ!」
    「オノォォッ!!」
     立て続けに加えられた攻撃にオノノクスはよろめき、倒れ伏した。
    「サーナイト、10万ボルト!」
    「サーナイッ!」
    「ウォーグッ!!」
     飛べなくなっても尚、シャドークロ—で襲いかかろうとしたウォーグルにサーナイトの10万ボルトが決まり、ウォーグルも戦闘不能となった。
    「勝てたには勝てたけど、なんだったんだ?あの熱線は。」
    「きっと、先に行けば分かるよ!」
    「もう、ここまで来ちゃいましたしね。」
     自分達が見た熱線について考えるユウキだが、ここはハルカ達の意見ももっともだと思い、先を急ぐことにした。

    「ウォーグル、ブレイブバード!」
    「ウォーグッ!」
    「グギャアッ!」 
     空中でウォーグルとリトル・ゼティスが交差する。一拍置いて—
    「グギャ・・・」
     リトル・ゼティスが墜落し、ほぼ同時にウォーグルも落下し、結果的に相討ちとなった。
    (これで12体目・・・、思ったよりも消耗が激しい。早めに終わらせないとマズイ・・・。)
    「ここは頑張って、ガブリアス!」
    「ガブゥッ!!」
     シロナのガブリアスは、体格的に負けているリトル・ゼティスに臆することなく睨みつけている。
    「「「グギャガガァ!!」」」
     シロナの消耗を感じたのか、3体のリトル・ゼティスが飛び掛かってきた。応戦の構えを取るシロナとガブリアス—その時
    —ズドオオオッ
    「「「ギャガァッ・・・」」」
    「「!!」」
     真横から飛んできた熱線が、リトル・ゼティス達を焼き尽くしたのだ。圧倒的な一撃に耐えかね、3体のリトル・ゼティスは戦闘不能になってしまった。
    (あれは・・・、確か逆鱗砲?何が起こっているの?いえ、今は後!先に残りの5体を倒さないと、皆がこいつらに会うと危ない!)
    「行くわよ、ガブリアス!!」
    「ガブッ!」
     シロナは残りのリトル・ゼティスに戦いを挑んだ。
                        —続く—
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    mochizo No.10783150 

    引用

    PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第57話「暴君の再来」

    「あーあ、ゼティスの奴も負けちまったか。その上、ポーンを襲って元気の塊を奪うたァ、やるじゃねぇか。」
    『感心してる場合か?』
     基地のコントロールルームでシェイラはモニターを見ていた。モニターには、ポーンに内蔵されている元気の塊目当てにポーンを破壊するゼティスが映っている。
    「ま、もう一働きしてくれりゃ御の字だわな。」
     シェイラは笑みを浮かべて言った。

    「マリル、転がるよ!」
    「ルリリリリリ!」
     凄まじい勢いの転がる攻撃は、ボーマンダにあっさりとかわされた。
    「ああ、惜しい!」
    「惜しい!じゃねぇ!何やってんだ!」
    「戦ってるんです〜!飛行タイプに岩タイプの技は効果抜群なんだからね!」
    「知ってるわ、そんな初歩的知識!てか、当てろ!」
    「うるさいな〜!当てりゃいいんでしょ当てりゃ!」
     戦いの最中だというのに、ソウルとコトネが口喧嘩を始めてしまった。正直ヒビキとしては、戦ってないのは2人ともだと思ったりする。ただ、自分まで喧嘩腰になってはどうにもならないと思い、なるべく笑顔で2人に注意した。
    「・・・ねぇ、2人とも。喧嘩ばかりしてたら勝てるバトルも勝てないよ。せめて喧嘩しないでいてくれたら、とっても嬉しいんだけど?」
    「「・・・・・・!」」
     極力優しく言ったつもりだが、ソウルもコトネの反応が何処かおかしい。ただ、2人とも何度も頷いてくれたので伝わったのだろう。よかった。
     それにしても問題は、2体のボーマンダであろう。見た目で判別できず、覚えている技も違っていて戦いにくい。その上、サザンドラはサザンドラで攻撃範囲が広く、懐に飛び込まねばまともに戦えそうにない。
    (思い切って、接近戦に持ち込んでみようかな・・・。)
     ヒビキがそう考え始めた時—どこからか一条の電撃が走り、ボーマンダの1体に命中した。
    「ギャガァァ!」
     電撃を受けたボーマンダは悲鳴をあげ、麻痺したのか動きが鈍くなった。ヒビキは、思わず電撃が飛んできた方を見る。
    「レッドさん、グリーンさん!」
     ヒビキが知る限り、世界最高クラスのトレーナーがそこにいた。
    「・・・レッドさん、怪我してるじゃないですか!大丈夫ですか?」
    「うん・・・、大丈夫。」
    「ところで、どうやってここに?」
    「さっきの戦いで出来た穴を通ってきたら、ここに続いてたんだよ。つーか、それどころじゃねぇだろ?」
     ヒビキがふと見ると、新たなトレーナーを観察しているのか、攻撃は収まっていた。
    「そんじゃ、とっとと片付けようぜ。」
    「「はい!」」
     グリーンの言葉に、ヒビキとコトネが応えた。

    「ゼクロム、ドラゴンクロー!」
    「レシラム、竜の波動!」
     トウコとNは先程から積極的に攻撃しているが、前回戦った時とは違い、攻撃が当たる直前に身を翻してかわされていた。
    「ダイケンキ、ハイドロポンプ!」
     トウヤの攻撃もやはり巧みにかわされてしまう。更にこちらの隙をついて様々な攻撃を仕掛けてきており、徐々に追い詰められ始めていた。
    「完全に動きを見切られてる感じですね。」
    「まったくだ、掠りもしない。おそらくは、リーダー格のカイリューを倒さないと突破は難しいだろうな。」
     その可能性は高いが、10体のカイリュー達がそれを許さないのだ。
     すると、突然、Nがしゃがみ込んで震えだした。
    「N,どうしたの?N!」
     トウコが必死に呼びかけると、震える声でNは言った。
    「すごく恐ろしい声だ・・・。こんなポケモンの声、聞いた事がないよ・・・。近づいてくる・・・!」
    「恐ろしい声?」
     耳を澄ませるがそれらしいものは聞こえない。だが、Nの事を考えると、あり得ない話ではないだろう。すると—
    —バッゴォォォォォンッ
    「グガァァァァァァッ!!」
     壁を突き破り、巨大なガブリアスが突如現れた。これにはトウコ達だけでなく、カイリュー達も驚いているようだ。そして、突如現れたガブリアスは、いきなり10体のカイリューに襲いかかり、その内の一体に喰らいついたのだ。
    「リューッ、リューッ!!」
     必死にもがいて抜けだそうとするカイリューだが、巨大ガブリアスはカイリューに喰らいついたまま乱暴に振り回し、地面に叩きつけた。まともにそれらをくらってしまったカイリューは、ピクリとも動かなくなった。
    「グゴァァァァァァッ!!」
     その光景に戦慄するトウコ達を威嚇するかのように巨大ガブリアスは、大気を地面を震撼させながら雄叫びをあげた。
     ところが、ここで信じられない事が起こった。カイリュー達が次々と巨大ガブリアスに向かっていくではないか。気合玉や吹雪、竜の波動などをくらわせるが、巨大ガブリアスは意に介さず、カイリュー達に襲いかかった。たちまち2体が蹴散らされるが、カイリュー達は怯まない。巨大ガブリアスが更にカイリュー達を蹴散らそうとした時だった。
     今まで静観していたリーダー格のカイリューが、強烈なドラゴンダイブをくらわせたのだ。さすがに巨体を吹っ飛ばす事は出来なかったが、巨体が大きく後ずさった。すると、突然Nが呟いた。
    「あのガブリアスは、かつて彼らの仲間だったらしい。それなのにいきなり襲われたから、カイリュー達は怒ってるんだよ。」
    「カイリュー達が・・・」
     トウコは、どこか寂しいような虚しいような思いを持ってその光景を見ていた。
                       —続く—
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