お店や施設の住人のお話　〇たぬきち３〇

〇たぬきち〇
エピソード３「若かりし頃の思い出」

【１話】
ふぅ…
おっと、いけないいけない
どんなご用だなも？
…いや、ちょっと昔のコトを思い出していただなも
今でこそこんなリッパなお店を切り盛りしてるボクだけど、
若いころは今からはソウゾウもつかない生活をしていただもよ
そうは言ってもこの村にいた頃の話じゃないけどね
ボクは確かにこの△△村の生まれだけど、
若いころは都会にいたコトがあるんだなも!
そこではそれなりに楽しいコトもあったし、
人には言えないようなミジメな目にもあっただなも…
……なーんてね
ボク、何をヘンなコト言ってるだなも!
○○さん、今の話は聞かなかったコトにしてほしいだなも!


【２話】
ふぅ…
おっと、いけないいけない
どんなご用だなも？
こないだ○○さんに昔のコトをちょっと話してから、
いろいろと若いころのコトとか思い出しちゃって…
…う〜ん、確かにその通りだも!
ボクみたいな筋金入りの商売人が、
仕事中にこんなコト考えてるようじゃいけないんだなも!
仕事は仕事、お金はお金…世の中キビシイだなも!
あれあれー？
○○さん、随分甘い考え方してるだもね？
世間に出て働いたコト、無いだもか？
言っとくけど、仕事の世界はキビシイだなも…弱肉強食なんだも!
のほほんとしていたら、あっという間にしゃぶりつくされちゃうだもよ？
どんなにアツイ夢や理想を持っていたって、
世の中、結局はお金が全てだも…
…夢だけじゃおなかはふくれないんだなも!

【３話】
ふぅ…
おっと、いけないいけない
どんなご用だなも？
○○さん、こないだは偉そうなコト言っちゃって、ごめんだも…
あの日のボクはホントにどうかしていただなも…
…○○さん、
ボクが若いころ都会にいたって話はもうしただもね？
実はボク、あの頃のニガイ思い出を
まだ捨て去るコトができないんだなも…
ちょっと聞いてくれる？
都会でのサクセスストーリーをユメ見て、若いころのボクは△△村を旅立ったけど、
やっぱり都会はそんな甘いトコロじゃなくってね…
手を出した事業がことごとく失敗して、
一文無しになったボクはそこから逃げ帰って来たんだなも!
ミジメだったも…ツラかっただなも…
あの時のザセツ感があるからこそ、
商売人として大きく成功した、今のボクがあるんだなもよ!


【４話】
ふぅ…
おっと、いけないいけない
どんなご用だなも？
○○さんにはいろいろとボクの若いころのお話、聞いてもらったし、
こうなったら最後まで聞いてほしいだも…
都会でユメやぶれて△△村に逃げ帰って来たボクは、
しばらく何もする気になれなかっただも…
だって、旅立つ時にすっごい大口たたいて出て行ったボクが、
帰って来たら一文無しだなんて…
あんまりミジメで、励ましてくれる人達の優しいコトバさえツラクって、
ボクはつい、みんなに当たり散らしてしまったんだも…!
自分で言うのもなんだけど、あの頃のボクはとんでもなくヤなやつだったも
…あの頃のボクにもそうやって、
優しいコトバをかけてくれた人がいただもよ
ボクの幼馴染でね、無口だけれど優しいコで、
ユメをあきらめたらアカン、ってボクを何度もはげましてくれただも
でも、ボクは…ボクは…そのコに向かって言ってしまっただも…
「ユメなんてしょせんお金の力にはかなわないんだも」って…!
…それ以来、そのコとは疎遠になってしまったけど、
本当はあの励ましのコトバ、とっても嬉しかっただも…